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【コラム】直進車と右折車の事故の過失割合(信号がない場合)

2022-02-04

ここでは、信号がない交差点において、同じ道の対向する方向から進んできた四輪自動車のうち一台が右折しようとして、直進中のもう一台と衝突した事故について、過失割合を検討していきます。

1.信号がない交差点における直進車と右折車の事故

この場合の基本的な過失割合は直進車20,右折車80,となります(判例タイムズ38巻図【114】)。直進車が優先なので、右折車のほうが過失が大きくなるわけです。

2.修正要素

1.直進車の過失をより大きくするものとして以下のものが挙げられます。

  • 既右折・・・右折車がすでに右折を完了しているか、それに近い状態の場合に衝突した場合、直進車の過失は20ポイント増えます。そのような状態で衝突したとすれば、より早い段階で気が付いて衝突を回避することができたはずなので、直進車の過失が大きくなるわけです。
  • 15km以上の速度違反・・直進車の過失が10ポイント増えます
    速度違反は危険を増す要素なので、直進車に15km以上の速度違反があると10ポイント加算されます。
  • 30km以上の速度違反・・直進車の過失が20ポイント増えます
    速度違反の程度が甚だしい場合にはより危険が増すので、30km以上の速度違反の場合には20ポイントの加算となっています。
  • その他の著しい過失がある場合は10ポイント加算されます
    脇見運転、携帯電話を使用しながらの運転、酒気帯び運転、などです。この図の場合は、直進車が全く減速しないで交差点に進入した場合もこれに当たります。
  • その他の重過失がある場合は20ポイント加算されます。
    酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、などの場合です。

2.右折車の過失をより大きく(直進車の過失を減算する)するものとしては以下が挙げられます。

  • 徐行しなかった場合  10ポイント右折車の過失が加算されます。
  • 直近右折の場合  同様に10ポイント右折車の過失が加算されます。
  • 早回り右折の場合 5ポイント右折車の過失が加算されます。
  • 大回り右折の場合 同様に5ポイント右折車の過失が加算されます。
  • 合図なしの場合 10ポイント加算されます。
  • その他の著しい過失や重過失がある場合 10ポイント加算されます。

3.まとめ

このように、信号機のない交差点で対向してきた直進車と右折車の事故(双方四輪自動車)は直進車8右折車2の過失とされるのが基本です。しかし、直進車の運転態様によっては直進車の過失がそれよりは大きくなることもあるので、注意が必要です。

また、直進車と右折車の事故は、直進車が速度を出していることが多く、相対速度が大きいために大きな事故になりがちです。運転していて右折する場合はもちろん、直進する場合も右折しようとしている車が前方に見えたら充分注意して運転することが重要です。

【コラム】直進車と路外出入り車の事故の過失割合

2021-12-06

1, 直進車と路外出入り車の事故の過失割合

道路を走っている車とその道路に出入りする車の事故の場合、どちらの過失が大きくなるでしょうか? これについては、判例タイムズ38号【147】図は、基本的な過失割合を路外出入り車8:直進車2(8:2)としています。すなわち、路外と出入りする車のほうが基本的に過失が大きいとするのが、判例タイムズ147図の立場です。

2, 【147】図適用の前提

上記【147】図適用の前提として、路外出入り車が減速、徐行等を履行していることを前提として、直進車に軽度の前方中止義務違反がある場合を想定している、とされています(278頁)。すなわち、路外に出る車は減速するし、路外から入ってくる車は徐行して入ってくるので、直進している車も前方をよく見ていれば衝突を避けられたはずだという考え方で、直進車にも過失を認めているわけです。

ただ、道路交通法の基本的な考え方として、直進車の走行を妨げてはいけないという考え方があり、基本は、路外出入り車のほうが過失が大きくなっています。

3, 直進車に不利な修正要素

直進車のほうに不利な修正として以下のものがあります。それぞれ、記載の数値の分、直進車の過失割合を重くするという意味です。

  1.  路外から進入する車が頭を出して待機していた場合は10ポイント

    ・・この場合、直進車から気が付くことがより容易であるはずだから、ということだと思われます。

  2. 路外から進入する車が既右折(右折を完了しているか、それに近い場合)の場合、10ポイント(ただし、反対側車線の直進車と衝突した場合のみ適用)

    ・・すでに右折を完了しているか、それに近い状況であれば、直進車は発見することがより容易だったと思われるから過失割合をより大きくする、ということでしょう。なお、タイムズの解説によると、右折完了後すぐの追突の場合はこの数値を用いて、車線に入って追突までの間隔が大きければ通常の追突事故とされ(その場合は原則として追突した車の過失が100%となる)、中間的な場合は中間値を取って解決する、とされています。

  3. ゼブラゾーンを走行していた場合 10ポイント~20ポイント

    ・・タイムズの解説(278頁)は車両の運転者等の意識としてゼブラゾーンはみだりに進入すべきではないと考えているのが一般的であること、抜け駆けのように敢えてゼブラゾーンを走行した運転者には交通秩序を乱すものとしてある程度非難すべきものがあること、を理由として挙げています。(ゼブラゾーンというのは、道路に白いペンキで縞模様が書かれているエリアのことで、通常、自動車の走行は想定されていません)

  4. 直進車に15km以上の速度違反があった場合 10ポイント

    ・・直進車に速度違反があればそれだけ事故回避が難しくなるので、過失が大きくなるのは自然なことだと思われます。

  5. 直進車に30km以上の速度違反があった場合 20ポイント

    ・・直進車に速度違反があればそれだけ事故回避が難しくなるので、その程度に応じて過失が大きくなるのは自然なことだと思われます。15km以上30km未満の場合と比べて速度違反の程度が甚だしいので、20ポイントの修正となっています。

  6. その他の著しい過失 10ポイント

    ・・脇見運転、酒気帯び運転、携帯電話で通話したり画面を注視していたりした場合、等が当てはまります。

  7. その他の重過失 20ポイント

    ・・酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、などが当てはまります。

4,直進車に有利な修正要素

逆に、直進車の過失を減らす方向の修正要素もあります。

  1. 幹線道路 5ポイント

    ・・「歩車道の区別があって、車道幅員がおおむね14m以上(片側2車線以上)で、車両が高速で走行し、通行料の多い国道や一部の都道府県道を想定している」とされています(203頁)。この場合の修正の理由はタイムズの解説には出ていませんが、おそらくは、このような道路は比較的速いスピードで大量の自動車が走行することを前提としており、直進車が優先されるべき程度が高いということだと思われます。

  2. 徐行なし  10ポイント

    ・・路外から入るときは徐行をせずに著しく加速して進入するような場合は、直進車が避けることは難しくなるので、直進者側の過失を減じる方向の修正要素とされています。

  3. 路外出入り車の著しい過失 10ポイント

    ・・脇見運転、酒気帯び運転、携帯電話で通話したり画面を注視していたりした場合、等が当てはまります。

  4. 路外出入り車の重過失 20ポイント

    ・・酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、などが当てはまります。

5,まとめ

 以上をまとめると、路外出入り車:直進車の過失割合は原則として8:2ですが、上記のように修正されることはあります。ただ、直進車の過失がゼロになるのは路外出入り車に重過失があるような例外的な場合に限られるので、直進車にも路外出入り車に注意をして運転する義務が課されていると言えるでしょう。

6,立証について

この【147】図の修正要素はどのようにして立証すればよいのでしょうか? まず、ドライブレコーダーがあれば、比較的明確になると思います。また、それ以外だと、コンビニなどの防犯カメラの画像を利用する方法もあり、コンビニなど店舗の駐車場との出入りの際の事故の場合等は、当該コンビニのカメラに写っていることも期待できます。ただ、防犯カメラの画像は比較手短期間で消えてしまうので、早めに管理者にお願いしてコピーをもらっておくなど、証拠の保全も重要です。 
 その他、実況見分調書物件事故報告書等が証拠になりうるのは他の類型の事故の場合と同じです。また、店舗の駐車場のように人が多い所であれば、目撃者も多いことも期待されるので、もし証言してくれる人がいれば、事実解明の手掛かりになりうるでしょう。また、訴訟になった場合には、過失割合について争いがある場合、当事者尋問が行われることが多いです(途中で示談が成立した場合を除く)。

 当事務所では、過失割合に争いがある案件を含め、多くの交通事故事件を解決してきました。過失割合で納得がいかないという方は、まずはご相談ください。交通事故に関しては、相談だけなら何度でも無料です。

【コラム】急ブレーキが原因の追突事故の場合の過失割合

2021-11-24

1, 追突事故の場合の一般的な過失割合

自動車が走行中に前を走る自動車に追突した場合、原則として、追突した側が10追突された側が0の過失割合となります。ふつうに走行していたのに後ろから衝突された場合、避けようがないので、一般的に10:0となるのは当然と言えるでしょう。

2, 急ブレーキをかけたために追突された場合の過失割合

しかし、前を走っていた車が急ブレーキをかけたために追突した場合には、基本的に、追突された車にも問題があると考えられます。そこで、判例タイムズ【154】図では、「被追突車に法24条違反がある場合」には追突した側70追突された側30(70:30)の過失割合としています。すなわち、道路交通法24条は「車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。」としており、それに反して、やむを得ない事情もないのに急ブレーキをかけた車が追突された場合は、追突された側にも30の過失割合を認めることとしたわけです。

3, 修正要素

ただし、以下の場合には、7:3という原則を修正することとされています。

① 事故現場の状況による修正

住宅街・商店街

住宅街・商店街の場合は、追突側に10ポイント不利な修正をすることとされています。これについては、タイムズの解説は、歩行者の多い場所では一般的に急ブレーキや原則が必要となることが多く、人の横断を予測してブレーキをかけたら結果的に違ったというように結果的に理由のない急ブレーキをかけることが予想されること、買い物や配達等の理由で停止することが頻繁にあるので後続車もそれを予測して運転すべきであること、を理由として挙げています。

② 追突した車に関する修正

  • 追突した側が15km以上の速度違反をしていた場合には追突した側に10ポイント不利な修正をすることとされています。
  • 追突した側が30km以上の速度違反をしていた場合には追突した側に20ポイント不利な修正をすることとされています。

追突した側に速度違反があった場合には、それだけ追突した側の過失を重く修正する趣旨であり、速度が出ていれば停止まで時間がかかり追突を防ぐにくくなるので、そのことを考えてこのような修正要素が加えられたのだと解されます。
また、

  • 追突側にその他の著しい過失があった場合、10ポイント追突側に不利な修正をします
  • 追突側にその他の重過失があった場合、20ポイント追突側に不利な修正をします

ここで著しい過失とは、脇見運転、酒気帯び運転、携帯電話を使いながらの運転、などをいい、重過失とは酒帯運転、居眠り運転、無免許運転などをいうとされています。これらは基本的に四輪車どうしの事故においては同じ定義を用いることとなります。
つまりは、追突する側の運転態様等に問題があり事故につながる要因があれば、その分不利な方向に修正するわけです。たしかに、車を運転しながら脇見していたり、飲酒して運転していたり、居眠りしながら運転していたりすれば、追突事故につながる恐れが高いわけで、それで不利に修正されるのは当然だと思えますね。

③ 追突された車に関する修正

  • 追突された車が幹線道路の走行車線上に停止していた場合、追突した側の過失割合を10ポイント下げる修正をすることとされています。
  • 追突された車の制動灯(ブレーキランプ)が交渉していた場合、追突した側の過失割合を10ポイント~20ポイント下げる修正をすることとされています。
    *解説では、汚れ等が原因で法定の照度がない場合や夜間にテールランプが点灯していない場合もこれに含めるとしています。
  • 追突された車に著しい過失がある場合は、追突した側の過失割合を10ポイント下げる修正をすることとされています。
  • 追突された車に重過失がある場合は、追突した側の過失割合を20ポイント下げる修正をすることとされています。

以上は、追突された側の車に関する要素ですが、判例タイムズでは、追突された側の過失を下げる要素として記載しています。追突された側に以上のような問題点がある場合には、追突した側の過失はその分下がるという意味です。 

4, まとめ

このように、追突の場合でも、必要のない急ブレーキが原因の場合は、過失割合は7:3とされます。10:0ではないとはいえ、基本的には追突した側の過失割合の方が大きくなりますが、ブレーキランプの故障などの問題がこれに重なると、5:5になったり、場合によっては追突された側の過失割合が大きくなることもありえます。
さらに、追突された側が後続車への嫌がらせのために意図的に急ブレーキをかけた場合には追突した側に過失があるかについては別途慎重に検討する必要がある旨、述べられており、そのような事例では必ずしもこの図の原則に囚われずに検討する必要があるということだと考えられます。
このように、追突であっても過失割合が10:0になるとは限らないので、追突事故の過失割合について相手方や保険会社にいわれたことに疑問がある、過失割合についての意見の相違が原因で追突事故の示談交渉が行き詰っている、等、追突事故の過失割合について悩んでおられる方は、まずは弁護士にご相談ください。当事務所では多くの交通事故案件を扱っており、過失割合に関する相談もよく受けます。ご相談ご希望の方は、まずはお電話か電子メールでご予約の上、立川か所沢の当事務所までご来訪をお願いします。なお、事故による負傷で事務所まで来るのが難しい場合等には、事務所からの距離によっては出張相談ができる場合もありますので、まずはお問い合わせください。

なお、この記事では前後の車が走行中の追突の場合について記述しました。駐停車車両に対する追突で過失割合が10:0にならない場合については判例タイムズ【157】があります。

【コラム】駐停車車両に対する追突でも10:0にならない場合

2021-11-18

1, 一般道における追突の場合の原則的な過失割合

一般道では、駐停車車両に対する追突の場合の場合、過失割合は10:0になるのが原則です。すなわち、判例タイムズ157図で示されているように、追突した側が10,追突された側が0,になるのが原則です。

 これは、走行している車が止まっている車に追突したら、原則として、追突したほうが100%過失があるということで、一般的な感覚にも合致すると思います。

2, 157図の過失割合が追突側に有利に修正される場合

しかし、157図を適用しつつも、過失割合が追突した側に有利に修正される場合があります。それは、以下の場合です。その場の状況についての要素である①を除けば、基本的に駐停車車両の止め方(場所や不灯火など)の問題と言えるでしょう。なお、下記各項目の、追突車の過失割合を減らすということは、同時に、駐停車車両の過失割合を高めるということを意味しますが、タイムズの書き方に従い、追突車両を基準に記載しました。

① 視認不良

降雨、濃霧、夜間で街灯がなく暗い所等の理由より視認が不良の場合には後続車から停車車両を発見することが困難なので、追突した側の過失を10ポイント減らす修正がされます。

② 駐停車禁止場所

駐停車禁止場所に停止している場合も、他の交通の妨害をして事故発生の危険を高めているとして、追突した車両の過失を10ポイント減らす修正をします。

③ 非常灯点滅等の不灯火等

道路交通法52条1項本文で、「車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。以下この条及び第六十三条の九第二項において同じ。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。」とされていますが、これを怠っていると、後続車からの発見が困難になります。そこで、追突した側の過失を10~20ポイント減らす修正をします。

④ 駐停車方法不適切

道路交通法47条は、1項「車両は、人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。」
2項 「車両は、駐車するときは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。」
と定めています。これに反する駐停車の場合には、10ポイント~20ポイント追突車の過失を減らす修正をします。タイムズはその例として、「道路幅が狭い所、追越車線、幹線道路等の交通量が多い地点」に駐停車した場合を挙げています。

 その他、車両が汚れ後部反射板の反射力が効かない場合、も挙げています。

⑤ その他の著しい過失

駐停車車両にその他の著しい過失がある場合には、追突した側の過失を10ポイント減らす修正をします。

⑥ その他の重過失

駐停車車両にその他の重過失がある場合には、追突した側の過失を20ポイント減らす修正をします。

なお、駐停車車両の著しい過失や重過失がどういう場合か、という点について、タイムズでは自招事故を理由とする場合や車両を放置している場合が例示されています。

以上のように、駐停車車両の側にも問題があれば、追突側の過失が100%とはならないことがあります。

 

3、157図における追突側に不利な修正要素

 157図の原則では追突側10:駐停車車両0の過失割合なので、原則から考えれば、追突側に不利な修正要素は意味を持ちません。しかし、上記2のように追突側に有利な修正要素がある場合には、逆に追突側に不利な修正要素が意味を持ちます。

 すなわち、上記3のように駐停車車両の問題で過失割合が修正される場合でも、

・追突した側に15km以上の速度違反があれば10ポイント追突側に不利に

・30km以上の速度違反があれば追突した側に20ポイント不利に

・その他の著しい過失(脇見運転、酒気帯び運転、携帯電話を使いながらの運転、など)が追突側にあれば10ポイント追突側に不利に

・重過失(酒帯運転、居眠り運転、無免許運転など)の場合は20ポイント追突側に不利に、

修正されます。また、

・追突された側の車両が故障などで退避不能の場合には追突側に10ポイント不利な修正がなされます。

 したがって、追突側に有利な事情がある場合でも、これら追突側に不利な事情もあれば、修正の結果、結局、追突車10駐停車車両0の過失割合になる場合もあります。

4, 過失割合に納得がいかない場合は弁護士にご相談ください

「駐停車車両の止め方にも問題があったのに、追突だから後続車が一方的に悪いと言われて納得がいかない」「左端に寄せて止まっていたのに相手方に中央に止まっていたと言われて過失があると言われている」など、過失割合に関して困っておられる方は、ぜひ、弁護士にご相談ください。当事務所では交通事故については相談だけなら無料です。また、弁護士特約を利用しての御依頼も歓迎します。
まずは、お電話か電子メールでご予約の上、立川か所沢の当事務所までご来訪をお願いします。なお、負傷で来れない場合等には事務所からの距離によっては出張相談ができる場合もあるので、まずはお問い合わせください。

なお、この記事では駐停車車両に対する追突の場合について記述しました。走行中の追突で10:0にならない場合については判例タイムズ【154】(被追突車に法24条違反がある場合)があります。

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