【コラム】急ブレーキが原因の追突事故の場合の過失割合

1, 追突事故の場合の一般的な過失割合

自動車が走行中に前を走る自動車に追突した場合、原則として、追突した側が10追突された側が0の過失割合となります。ふつうに走行していたのに後ろから衝突された場合、避けようがないので、一般的に10:0となるのは当然と言えるでしょう。

2, 急ブレーキをかけたために追突された場合の過失割合

しかし、前を走っていた車が急ブレーキをかけたために追突した場合には、基本的に、追突された車にも問題があると考えられます。そこで、判例タイムズ【154】図では、「被追突車に法24条違反がある場合」には追突した側70追突された側30(70:30)の過失割合としています。すなわち、道路交通法24条は「車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。」としており、それに反して、やむを得ない事情もないのに急ブレーキをかけた車が追突された場合は、追突された側にも30の過失割合を認めることとしたわけです。

3, 修正要素

ただし、以下の場合には、7:3という原則を修正することとされています。

① 事故現場の状況による修正

住宅街・商店街

住宅街・商店街の場合は、追突側に10ポイント不利な修正をすることとされています。これについては、タイムズの解説は、歩行者の多い場所では一般的に急ブレーキや原則が必要となることが多く、人の横断を予測してブレーキをかけたら結果的に違ったというように結果的に理由のない急ブレーキをかけることが予想されること、買い物や配達等の理由で停止することが頻繁にあるので後続車もそれを予測して運転すべきであること、を理由として挙げています。

② 追突した車に関する修正

  • 追突した側が15km以上の速度違反をしていた場合には追突した側に10ポイント不利な修正をすることとされています。
  • 追突した側が30km以上の速度違反をしていた場合には追突した側に20ポイント不利な修正をすることとされています。

追突した側に速度違反があった場合には、それだけ追突した側の過失を重く修正する趣旨であり、速度が出ていれば停止まで時間がかかり追突を防ぐにくくなるので、そのことを考えてこのような修正要素が加えられたのだと解されます。
また、

  • 追突側にその他の著しい過失があった場合、10ポイント追突側に不利な修正をします
  • 追突側にその他の重過失があった場合、20ポイント追突側に不利な修正をします

ここで著しい過失とは、脇見運転、酒気帯び運転、携帯電話を使いながらの運転、などをいい、重過失とは酒帯運転、居眠り運転、無免許運転などをいうとされています。これらは基本的に四輪車どうしの事故においては同じ定義を用いることとなります。
つまりは、追突する側の運転態様等に問題があり事故につながる要因があれば、その分不利な方向に修正するわけです。たしかに、車を運転しながら脇見していたり、飲酒して運転していたり、居眠りしながら運転していたりすれば、追突事故につながる恐れが高いわけで、それで不利に修正されるのは当然だと思えますね。

③ 追突された車に関する修正

  • 追突された車が幹線道路の走行車線上に停止していた場合、追突した側の過失割合を10ポイント下げる修正をすることとされています。
  • 追突された車の制動灯(ブレーキランプ)が交渉していた場合、追突した側の過失割合を10ポイント~20ポイント下げる修正をすることとされています。
    *解説では、汚れ等が原因で法定の照度がない場合や夜間にテールランプが点灯していない場合もこれに含めるとしています。
  • 追突された車に著しい過失がある場合は、追突した側の過失割合を10ポイント下げる修正をすることとされています。
  • 追突された車に重過失がある場合は、追突した側の過失割合を20ポイント下げる修正をすることとされています。

以上は、追突された側の車に関する要素ですが、判例タイムズでは、追突された側の過失を下げる要素として記載しています。追突された側に以上のような問題点がある場合には、追突した側の過失はその分下がるという意味です。 

4, まとめ

このように、追突の場合でも、必要のない急ブレーキが原因の場合は、過失割合は7:3とされます。10:0ではないとはいえ、基本的には追突した側の過失割合の方が大きくなりますが、ブレーキランプの故障などの問題がこれに重なると、5:5になったり、場合によっては追突された側の過失割合が大きくなることもありえます。
さらに、追突された側が後続車への嫌がらせのために意図的に急ブレーキをかけた場合には追突した側に過失があるかについては別途慎重に検討する必要がある旨、述べられており、そのような事例では必ずしもこの図の原則に囚われずに検討する必要があるということだと考えられます。
このように、追突であっても過失割合が10:0になるとは限らないので、追突事故の過失割合について相手方や保険会社にいわれたことに疑問がある、過失割合についての意見の相違が原因で追突事故の示談交渉が行き詰っている、等、追突事故の過失割合について悩んでおられる方は、まずは弁護士にご相談ください。当事務所では多くの交通事故案件を扱っており、過失割合に関する相談もよく受けます。ご相談ご希望の方は、まずはお電話か電子メールでご予約の上、立川か所沢の当事務所までご来訪をお願いします。なお、事故による負傷で事務所まで来るのが難しい場合等には、事務所からの距離によっては出張相談ができる場合もありますので、まずはお問い合わせください。

なお、この記事では前後の車が走行中の追突の場合について記述しました。駐停車車両に対する追突で過失割合が10:0にならない場合については判例タイムズ【157】があります。

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