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【コラム】交通事故の被害者なのに裁判所から呼び出し状が来た?

2024-11-19

1.裁判所から呼び出し状が来るケース

交通事故の被害者なのに裁判所の民事部から呼び出し状が来る場合があります。もっとも、通常、呼び出し状は単独で来るわけではなく、訴状などとともに来ます。交通事故の被害者のところに呼び出し状が来るとすると、一般に、民事調停を起こされた場合と、債務不存在確認訴訟を起こされたケースが考えられます。治療が長引いていると、加害者側から、早期に補償内容を確定したいという考えで調停や訴訟を起こされるケースがあります。すなわち、加害者側の保険会社としては支払額を早期に確定したいという考えがあり、加害者本人を原告として、代理人弁護士を通して民事調停や債務不存在確認訴訟を進めてくるわけです。

2.民事調停

民事調停は簡易裁判所で行われる調停であり、当事者同士の話し合いです。ただ、間に調停委員が入って行われるところが裁判所外での話し合いとの違いです。もっとも、話し合いであることに変わりはないので、申立人から何らかの提案がされても、合意する必要はありません。合意ができないまま2回~3回程度期日が開かれると不調で終了となるのが一般的です(回数は決まっているわけではないので1回で打ち切りの場合もあればもう少し期日を入れる場合もあると思います)。

3.債務不存在確認訴訟

債務不存在確認訴訟とは、原告には被告に対する債務が存在しないことの確認を求める訴訟です。債務が全く存在しないことを求める訴訟も可能ですが、一定額を超えては存在しないことの確認を求める訴訟もあります。交通事故の加害者が起こすのですから全く債務が存在しないという内容は妙にも思えますが、争われること前提でそのような内容の訴状が出される場合もあります。

4.対応について

まだ治療を続けたい場合、治療費も増えていくので確定できないし、慰謝料の額も治療期間に応じて計算するのが一般的であるため確定できません。さらに、後遺障害が残れば後遺障害慰謝料や逸失利益等も請求できますが、その有無や金額も治療中の時点では計算できません。それゆえ、治療中の時点で支払いを求めることができる金額を確定するように求められても被害者からみれば応じるわけにはいきません。しかし、裁判所から呼び出し状が来ている以上、対応しないといけないし、特に訴訟の場合は放置すると敗訴判決が出てしまい、大変な不利益を受けることになりかねません。では、どのように対応すればよいでしょうか。

まず、民事調停の場合は、呼び出し状に記載された期日に出席して、調停委員に現時点では治療中であるため合意できないことを伝えれば良いでしょう。

一方、民事訴訟の場合は、期限(基本は、第1回期日の1週間前まで)に答弁書を提出することが必要です。もっとも、答弁書は期日直前でも受け付けてはくれますが、必ず期日には間に合うように出さないといけません(郵送の場合必着)。何もせずに期日を過ぎてしまうと敗訴判決が出てしまう恐れがあります。

もっとも、民事訴訟の場合、どのような内容の答弁書を書けばよいのか、一般の方にはわかりにくいと思います。それゆえ、訴状が来たら、速やかに弁護士に相談、依頼することが望ましいと思います。

弁護士は、このような状況で依頼された場合、まず、答弁書に原告の請求(債務が(一定額以上)存在しないことの確認)を争うことを明記し、さらに、被告が現在治療中であることを記載して、さらに、症状固定後に反訴提起をして損害額の請求を行うことを記載するのが基本です。つまり、債務が(一定額以上)存在しないということの確認は認められるべきではないと述べたうえで、症状固定になり損害額が計算できるようになったらこちらからも訴訟を起こす、ということを述べるわけです。

もっとも、裁判に詳しい人だと、裁判の期日は1か月に1回くらい入るはずなのに次の期日までに何かしなくてよいのか、と疑問に思うかもしれません。この点については、治療中で損害額が固まらないという状況では裁判所は次回期日までの期間を長めに、例えば2か月~3か月程度空けて入れることも多く、また、その次回期日でもまだ症状固定になっていない場合は状況を報告する程度で良いという扱いが一般的です。

その後、症状固定後、あるいはさらに被害者請求により後遺障害の等級認定がなされてから反訴をして、相手方に損害額の支払いを求めていく、という流れが一般的です。

もっとも、治療があまりにも長引くと本当に因果関係がある治療期間といえるのか疑問を呈されて内容の審理に移っていく可能性はないとは言えないでしょう。ただ、事故による負傷の治療に必要な期間はケースにより様々なので、多少長引いている程度だと上記のような扱いで実質的な審理に入らずに待ってくれることが多いです。

症状固定後、あるいは、後遺障害等級認定後には反訴提起をするので、そういう意味では請求は当初から訴訟で行っていくということになります。この場合、債務不存在確認訴訟は反訴である損害賠償請求事件と併合されます。つまり、本訴、反訴の2個の訴訟が併存する形になるもの(それゆえ、それぞれの事件番号は残り、「本訴原告」「反訴原告」などの用語が使われます)、実質は一つの裁判として進行していくわけです。その後の流れは通常の損害賠償請求の訴訟と基本的に同じです。

5.弁護士にご相談を

いずれにせよ、裁判所から呼び出し状が来たら、まずは弁護士にご相談ください。交通事故の被害に関しては、損害の計算、過失割合、後遺障害の等級認定、その他複雑な要素が多いので、経験が豊富な弁護士に相談するのが望ましいです。弁護士にご依頼頂ければ、訴訟の期日については弁護士が答弁書を作成し代理人として出廷する等、出廷も準備書面等の作成等も弁護士が対応します。

当事務所でもこれまで多くの交通事故案件を扱ってきたので、ぜひ、ご相談ください。ご相談ご希望の方は、まずは電子メールかお電話でご予約の上、立川の当事務所までご来訪ください。交通事故については、相談だけなら無料です。

【コラム】弁護士特約とは何か?

2024-11-11

交通事故案件に利用できる弁護士特約とは?

交通事故に関して、弁護士特約という仕組みを聞いたことがあるでしょうか? これは、自動車保険などに付されていることがあるもので、一定の条件の元、保険会社が弁護士費用を出してくれるものです。自動車保険に加入する際に一緒に加入できる場合が多いですが、それ以外に火災保険など他の種類の保険に付されている場合もあります。

交通事故の弁護士特約は、交通事故の被害に遭った際に加害者側との交渉や訴訟等を弁護士に依頼した場合に用いることができます。すなわち、相手方保険会社の提案内容や対応に不満がある場合、自分の側の保険会社による交渉では話し合いが進まない場合、10:0の事故で自分の側の保険会社が交渉を代行できない場合、等、加害者側への交渉や訴訟を弁護士に依頼したい場合があると思いますが、そのような場合に用いることができるのが弁護士特約です。

弁護士特約で支払われるのは?

弁護士特約の保険会社は、通常、弁護士費用(着手金、成功報酬など)の他、実費(依頼した弁護士が業務で使った郵便代金や、裁判をする場合の印紙代等)も支払ってくれます。実費としては、医療鑑定や医師の意見書作成の費用なども出してくれる場合があり、そのような、高額になりがちな費用を出してくれるのはかなり助かると思います。

なお、基本的に自己負担が生じないというのがメリットなのですが、弁護士特約から支払われる保険の額は上限があり、多くの保険会社では300万円としています。それゆえ、それ以上の額の場合は自己負担が生じることになりますが、実際のところ、弁護士費用が300万円を超えるのはかなり損害が大きい場合のみなので、大半の案件では上限には到達しません。それゆえ、大半の場合、上限を超えることを心配する必要はないです。ただ、稀に上限が100万円の弁護士特約保険もあるので、注意が必要です。

それ以外に弁護士特約の基準と異なる報酬基準を用いている事務所が差額を求めてくる場合はあるかもしれません。この点、当事務所では上限を超えない限り弁護士特約の基準による支払いで良いこととしています。

また、交通事故の被害に遭った場合に用いることができる保険ですので、逆に加害者側の場合は使えないのが一般的です。例えば、ご自身が事故を起こしてしまって相手方から修理代や慰謝料等を請求されている場合に、その減額の交渉を弁護士に依頼したとしても、その弁護士報酬等については弁護士特約は使えないのが一般的です。それゆえ、加害者の方からの依頼の場合は弁護士費用は自己負担となるのが原則です。

いずれにせよ、どのような場合に利用できるか、どのような基準で支払われるか、は保険の契約内容に寄りますので、ご加入の保険会社にご確認いただければ、と思います。

弁護士特約に入っておくメリット

弁護士特約に入っておくと、交通事故の被害に遭ったときに弁護士に頼みやすいというメリットがあります。もし、弁護士費用を自己負担しないといけないのであれば、相手方保険会社からの提示内容に不満があっても、弁護士に依頼した場合の費用と依頼のメリットとを比較しないといけなくなってしまいます。この点、ご自身の加入している保険会社が費用を出してくれるなら、費用を気にせずに依頼することができます。例えば、自身の損害が物損のみであったり、人身傷害もあるものの後遺障害がなく想定される慰謝料等が比較的少額の損害の場合、弁護士特約がないと弁護士費用の支払額の方が弁護士への依頼により経済的利益が増えた分より大きくなってしまうこともありえますが、弁護士特約があれば、そのような心配なく依頼することができます。

もちろん、大きな事故で賠償額が大きい場合でも、弁護士費用の自己負担がなければそれだけ多くを手元に残せるわけで、メリットは大きいです。

事故に遭ったが弁護士特約に入っているかわからない場合

事故にあったけれどもご自身の保険に弁護士特約が付いているかわからない場合、まず、ご自身が加入している保険会社にご確認ください。この際、自動車保険のみならず火災保険など別の種類の保険にも入っているならその保険会社にも聞いてみましょう。また、ご自身ではなくご家族の保険の弁護士特約を使えることもあるので、ご自身の保険には付いていない場合、ご家族のご加入の保険についても確認してみると良いと思います。

弁護士特約を使うことのデメリットは?

弁護士特約を使うことには何かでメリットがあるでしょうか? 実際のところ、デメリットは特にないと思います。使ったからといって保険料が上がることもありません。それゆえ、弁特に入っているなら、事故の際には遠慮なく使った方が良いと思います。

なお、今事故に遭ったわけではないが気になるという方は、保険会社に聞いてみると良いでしょう。もちろん、保険料の支払いは必要ですが、事故に遭った時のことを考えると加入しておいた方が良いとは思います。

弁護士特約を利用してのご依頼の手順

弁護士特約を利用してご依頼をご希望の場合、まず、ご加入の保険会社に利用予定であることを伝えてください。同時に、ご相談予定の法律事務所にも相談予約をする必要があります。当事務所にご相談ご希望の場合は、電話か電子メールでご予約の上、ご来訪ください。

当事務所は、立川にあり、平日午前10時から午後9時まで(電話受付は午後7時まで)、日曜日午前10時から午後7時まで営業しております。当事務所では、交通事故案件(被害者側)については多く扱ってきましたので、まずはご相談頂ければ、と思います。

【コラム】任意保険会社との交渉(慰謝料について)

2024-10-08

交通事故の慰謝料とは?

交通事故の慰謝料は、入通院慰謝料(傷害慰謝料)と、後遺障害慰謝料があります。いずれも事故の被害による精神的苦痛を補償するためのものですが、前者は事故による負傷そのものによる苦痛に対する補償であるのに対して、後者は事故による後遺障害による苦痛に対する補償となります。それゆえ、入通院慰謝料が人身事故であれば基本的に認められるのに対して、後遺障害慰謝料は後遺障害が残った場合にしか認められません。

交通事故の慰謝料の計算方法

交通事故の慰謝料はどのように計算するのでしょうか? まず、裁判所でも用いられる「赤い本」の基準を元に解説させていただきます。ここで、入通院慰謝料については、入院期間・通院期間に応じて計算することとなっており、そのための表があります。入院や通院の期間が長いほど金額は増えますが、ただ、必ずしも比例するようにはなっておらず、入・通院の期間が長くなるにつれて、期間が延びても少しずつしか増えなくなっています。また、入院の方が苦痛が大きいと考えられるため、同じ期間であれば入院がある場合の方が金額は大きくなります。

なお、上記の表には、程度の軽いむち打ち等の場合に用いる表(「赤い本」表Ⅱ)とそれ以外に用いる表(「赤い本」表Ⅰ)があります。これらの表を用いれば、入院、通院、それぞれの期間から慰謝料の額を算出することができます。このように、入通院の期間に応じて決まるものであるため、通常、治療が終了してから交渉することとなります。治療途中では入通院の期間を確定できず、総額を算出できないからです。

一方、後遺障害慰謝料は後遺障害の等級に応じて基準があり、例えば、一番軽い14級だと110万円、12級だと290万円、というような基準があります(「赤い本」の基準)。一般的には、被害者請求などで後遺障害の等級を得てから、その等級に基づいて請求しますが、何らかの事情で等級認定を得られなかった場合には訴訟で直接請求する場合もあります。

任意保険会社との慰謝料の交渉

被害者の方が加害者側の任意保険会社と交渉する場合、保険会社は最初から上記金額での支払いを提示してくるでしょうか? 実のところ、多くの場合、そうではありません。まず、自賠責の基準やそれに近い基準で提示してくることが多く、上記の「赤い本」の基準(裁判基準とも言います)と比べてかなり低い提案のことが多いです。これは、任意保険会社は自賠責の基準内であれば最終的に自賠責の保険会社に支払ってもらえるため、自賠責基準で提案して自社の負担を抑えようとするからであると思われます。任意保険基準と呼ばれているものもありますが、これは各保険会社内で定められているものであり公表はされていないものの、自賠責の基準とあまり変わらないと思われます。

上記のように、任意保険会社が最初に提案してくる慰謝料の額は、「赤い本」基準と比べて低い場合が多いので、そのまま示談してしまうと、本来補償されるべき額を払ってもらえずに損をしてしまうことになりかねません。もちろん、すべての場合において低い提案であるとは断言できませんが、大半のケースにおいて当初の提案はかなり低いものであると考えられます。これは、入通院慰謝料でも後遺障害慰謝料でも、基本的に変わりません。

そこで、弁護士にご依頼頂ければ、「赤い本」の基準で交渉します。もっとも、弁護士が入っても必ず「赤い本」の基準満額で示談できるとは限りませんが、9割程度の金額で示談できることは多く、粘り強く交渉して満額での示談となることも珍しくありません。また、充分な金額まで上がらない場合は、訴訟において解決するという方法もあります。

いずれにせよ、交通事故の慰謝料については弁護士にご依頼いただくことで、当初提案より金額が上がり「赤い本」基準(裁判所の基準)に近いところまで上がるケースは多いので、まずはご相談ください。また、相手方保険会社から提示を受ける前であってもあらかじめ弁護士に依頼することはもちろん可能です。その場合は、弁護士が入っているので、相手方保険会社は最初の提案からそれなりの額で提示してくることも多く、また、当初は低めの提示の場合も同様に「赤い本」の基準を用いて交渉していくこととなります。

このように、交通事故の慰謝料については、相手方任意保険会社の提案と裁判所等で用いられている「赤い本」の基準には大きな開きがあることが多いので、交通事故の被害に遭ったら、まずは弁護士にご相談ください。当事務所では交通事故の相談は、相談だけであれば無料となっております。また、ご依頼の場合、弁護士特約のご利用も歓迎します(なお、弁特のご利用の可否はあらかじめご加入の保険会社にご確認頂ければ、と思います)。弁護士特約がない場合は、基本的に相手からの支払いがあった際に成功報酬として弁護士報酬を頂く仕組みになっており、依頼時点では費用はかかりませんので、ご安心ください。

ご相談ご希望の方は、まずは、当事務所にお電話もしくは電子メールでご予約の上、立川の事務所までご来訪をお願いします。なお、場合により、web等でのご相談も可能ですが、正式のご依頼の前には一度直接の面談が必要となっております。平日は午後9時まで(電話受付は午後7時まで)、日曜日も午後7時まで営業しておりますので、平日昼間にお時間を取れない方は、平日夜か日曜日にご相談いただければ、と思います。

【コラム】交通事故の損害賠償請求のタイミング

2024-04-22

交通事故の損害賠償請求とは?

交通事故の被害に遭った場合、治療費、通院交通費、入院雑費、入通院慰謝料、休業損害、後遺障害慰謝料、逸失利益、など様々な損害について請求できます。また、物損については車の修理代(ただし全損の場合は車の経済的価値)、代車費用、評価損、などが請求できます。ただ、上記のどの項目を請求できるかは、実際に生じた被害に基づいて決まってきます。

また、上記のうち治療費は相手方任意保険会社が直接医療機関に支払う場合も多いですが、計算上損害賠償の一部とされるので、被害者側にも過失がある場合には最終的に過失相殺対象となってしまいます。

どのタイミングで請求するか?

上記のように様々な項目があるわけですが、それぞれいつ請求するのでしょうか?

まず、物損については損害が明らかになれば請求できるため、比較的早い段階で請求することが多いです。人身に先んじて物損だけ示談することも珍しくありません。ただ、ここでの過失割合についての合意が後々人身の過失割合の評価に影響することもありうるので、注意が必要です。

次に、人身傷害のうち、治療費は相手方保険会社が医療機関に直接払うケースが多く(これを「任意一括」といいます)、その場合は特別な手続きは必要ありません。ただ、数か月程度で打ち切りを伝えられる場合もあり、その場合は継続のために交渉するか、自費(健康保険は「第三者行為による傷病届」を出せば使えます)で支払って治療終了後に相手方保険会社に請求することになります。ただし、任意一括対応終了後の治療費についても相手方保険会社が支払いに合意するかはケースに寄ります。

通院交通費は公共交通機関を使う場合は自費で払って症状固定後に請求する場合が多いですが、タクシー代は自己負担だと家計に影響が大きいので、支出後すぐに請求する場合も多いです。ただし、タクシー代は実際にタクシーを使った証拠が必要で、かつ、タクシーで通院する必要性が認められないと支払ってもらえません。すなわち、実際にタクシーで通院したということのみならず事故での負傷による症状が重かった等の理由で公共交通機関で通院することが困難であったことを示す必要があります。なお、公共交通機関を使った場合の実費や自家用車を使った場合のガソリン代(1km当たり15円で計算)は通院の必要が認められれば交通費も基本的に認められます。

また、休業損害については、生活に必要な補償なので、治療中でも月1回など定期的に振り込んでもらうケースも多いです。ただ、この段階では最終的な過失割合も決まっておらず、また、相手方保険会社から見ると事故と休業の因果関係についても精査せずにとりあえず支払っているという考えがあり、しばらくした段階で打ち切りを伝えてくるケースも多いです。その場合、継続を求めて交渉しても応じてもらえなければ、残額は別途症状固定後に交渉して支払ってもらうことが考えられます。なお、この段階では過失分を考慮せずに支払われていたとしても、のちに示談の際には被害者の過失に相当する分を補償額全体から差し引くこととなる場合があるので、要注意です。

入通院慰謝料は、怪我そのものに対する慰謝料であり、障害慰謝料とも言いますが、その請求は通常は症状固定後にします。なぜなら、入院や通院の期間に応じて金額が決まるため、症状固定を待たないと金額が確定できないからです。なお、後遺障害の等級認定を求める場合は、入通院慰謝料など等級認定にかかわらず請求できる部分についても等級認定の結果をみてからまとめて交渉するのが一般的です。

後遺障害慰謝料と逸失利益は、症状固定後に残った症状に対する補償なので、症状固定後してからの請求となります。症状固定後であるのはもちろん、後遺障害等級認定がされてから請求するのが一般的です。もっとも、自賠責の等級認定がされなくても理論的には請求できる場合もあるのですが、任意交渉では等級認定後でないとまず支払ってもらえません。そこで、被害者請求等で自賠責の等級認定を得て、それからその等級に従った後遺障害慰謝料と、その等級に応じた労働能力喪失率で計算した逸失利益を請求するのが通常の手順です。なお、自賠責の認定結果に納得がいかない場合は異議申立てが可能です。

このように、補償の項目により、交渉の時期は異なってきます。なお、交渉しても合意に至らない場合は、民事訴訟で解決するという方法もあります。訴訟は症状固定後、(後遺障害認定を求める場合は)後遺障害等級認定が終わってから交渉して、それでも合意に至らない場合に行うというのが基本です。ただし、等級認定を巡る手続きが長期化した場合に時効の完成を防ぐために後遺障害と関係ない部分について先に提訴することは理論的には考えられるでしょう。ただ、それは例外的で、通常は、等級認定まで終わってから交渉がうまくいかなかった場合に、訴訟へ進むということになります。

ちなみに、物損は3年、人身は5年で時効にかかってしまうので、治療や交渉が長引いている場合は注意が必要です。後遺障害については症状固定日が起算点ですが、症状固定日自体が争点になりうるので要注意です。

自賠責への被害者請求

自賠責への被害者請求は治療途中でも可能であり、慰謝料なども自賠責の基準に従って支払ってくれるので、治療が終わるまで待っていると家計が厳しいという場合には自賠責への被害者請求を治療中に行うことも考えるとよいでしょう。その場合でも終了後に改めて後遺障害等級認定を求めて被害者請求をすることが可能です。

まずは弁護士にご相談を

このように、交通事故の損害賠償請求は、最後にまとめて行うこともできますが、治療中に休業損害や通院交通費等、また、治療費の打ち切り等について相手方保険会社と交渉することもあります。そのような点も含めて、早いうちから法律の専門家の力を借りたい場合は、ぜひ、弁護士にご相談ください。

当事務所では、長年交通事故の被害者救済のために業務を行ってきました。交通事故のことで悩んでおられる方は、ぜひ、ご相談ください。当事務所では、交通事故については相談だけなら無料です。まずは、お電話か電子メールでご予約の上、立川の当事務所までご来訪をお願いします。なお、事故による負傷等ですぐに来訪が難しい場合はまずはお電話などで相談対応させていただくことも可能です。

【コラム】労災保険を使った場合における事故の加害者側への請求

2024-04-08

1, 交通事故における労災保険の使用

 労災保険は、業務上の事由や通勤中に負傷した場合に補償がされる公的な保険です。労災は上記のように業務上の事由や通勤中の負傷について補償する保険なので、交通事故の場合も要件を満たせば使えます。
 労災保険は、治療費や休業損害などを支払ってくれます。ただし、休業損害は計算上の額の6割及び特別支給金2割の支給であり、満額ではない点に注意が必要です。また、後遺障害の認定がされると、逸失利益についても一定の範囲内で補償がされます。
 労災保険の場合過失相殺がされないので、特被害者側にも過失がある場合には労災を用いるメリットは一般に大きいといえるでしょう。

2, 労災保険で補償されないもの

 労災保険では精神的損害については補償されません。つまり、労災保険からは慰謝料は支払われないのです。また、休業損害や逸失利益も全額が補償されるわけではありません。そこで、充分な補償を受けるためには不足分を加害者側に請求する必要があります。
 なお、ここで、休業損害は損害の6割の分は相手方への請求から差し引く必要がありますが、特別支給金である2割の部分は差し引く必要はありません。

3, 労災保険による後遺障害等級認定

 労災保険により後遺障害等級認定をしてもらうこともできます。それにより、逸失利益の補償が労災の基準に基づいて行われます。ただし、労災の認定した等級を基に相手方保険会社に請求してもそのまま認めてもらえるとは限りません。自賠責の認定より緩やかに認定される傾向がある代わりに保険会社との交渉では根拠としては必ずしも十分ではなく、訴訟においても自賠責の認定ほど重視されない傾向があるように思います。 
 とはいえ、認定を受けられれば労災保険から逸失利益を支給してもらえるというメリットがあるので、認定を受けられそうな場合はぜひ申請するとよいでしょう。

4, 労災を使用した場合でも弁護士にご相談を

 労災を使用した場合でも、慰謝料など、労災保険から支給されない分や休業損害、逸失利益のうち労災からの支給では不足している分の請求については、ぜひ、弁護士にご相談ください。労災保険からの支給分を差し引く以外は、基本的に他の場合と同様、加害者側に対して請求をしていくことになります。それゆえ、相手方保険会社等との交渉や訴訟については、ぜひ、弁護士にご相談いただければ、と思います。

 また、労災で後遺障害等級認定を得た場合でも自賠責に対して重ねて後遺障害の等級認定を求めることもできるので、自賠責保険に対する被害者請求についても弁護士にご相談ください。ご依頼の場合は、自賠責への請求の後の相手方保険会社との交渉も引き続き弁護士が担当させていただきます。
 当事務所では労災を利用した事案についても多くご相談、ご依頼を受けてきました。労災は使用したけれどもそれ以外の補償をどのようにして請求すればよいかわからないという方は、ぜひ、当事務所にご相談いただければ、と思います。

【コラム】事故直後に弁護士に依頼するメリット

2024-03-25

1.交通事故直後のご相談

交通事故にあったら、まずは警察への通報、怪我をしていたら程度により救急車を呼ぶ、あるいは自力で病院に行く、など至急しないといけないことがあります。では、その後、何をすればよいでしょうか? 

おそらく、これから何をしたらよいのか、加害者や相手方の保険会社と何を話したらいいのか、治療費はどうなるのか、仕事を休まざるを得なかったら補償してもらえるのか、自賠責は関係あるのか、車の修理代はどうなるのか、後遺症が残ったらどうなるのか、など様々なことがわからず、不安ではないでしょうか? そこで皆様にお勧めしたいのが弁護士への相談です。

2.事故直後に相談するメリット

交通事故について、保険会社との交渉がうまくいかなくなった段階でご相談に来られる方も多くおられます。その段階での相談ももちろん可能ですが、事故の直後に相談するメリットもあります。

今後の流れについて弁護士から説明を受けることができること。また、わからない場合に質問することもできること

初めて交通事故に遭った場合、相手方保険会社との交渉やその他の手続きがどのように進んでいくのかわからないことも多いと思います。その点、交通事故案件を多く扱っている弁護士から説明を受けたり質問したりすれば、今後の流れがおおよそわかり、どの段階で何をすればよいのかを理解することができます。流れを知ればある程度安心できるでしょうし、また、各段階で適切な対応を取っておくことが、その後の損害賠償請求において重要になってくることもあります。例えば、どの程度通院したらよいか、整形外科と整骨院の違い、等についても、あらかじめ知識を得ておいたほうが良いと思います。

交通事故の補償の仕組みについて弁護士から説明を受けることができること。また、わからない場合に質問することもできること

交通事故の損害賠償請求については、そもそも誰に請求するのか、相手方本人だけなのか、仕事中の事故なら相手方の会社に請求できるのか、相手方保険会社が払ってくれるのか、自分が加入している保険会社による支払との関係はどうなるのか、など、わからないことがたくさんあると思います。

また、入通院慰謝料、休業損害、通院交通費、入院雑費、後遺障害慰謝料、逸失利益、など案件により様々な項目を請求できますが、初めて事故に遭った方にはこのような項目の意味自体、分かりにくいと思います。

このような、一般の方にはわかりにくいことも弁護士から説明を受けることができるのがメリットです。

3.事故直後に弁護士に依頼するメリット

上記のように弁護士に相談することもメリットがありますが、さらに依頼した場合はどういうメリットがあるでしょうか?

物損についても弁護士が代理人として交渉することができる

物損については事故直後から交渉が行われることが多いです。そこで、早期に弁護士を代理人として選任することにより弁護士に交渉を委ねることができるのはメリットといえるでしょう。

休業損害についても弁護士が代理人として交渉することができる

事故により休業せざるを得ない場合、生活費の不足を防ぐために速やかに休業損害の請求をしたいという方も多いです。そういう場合、弁護士にご依頼いただければ代理人として相手方保険会社と交渉いたします。

通院期間の途中でも弁護士からアドバイスを受けられる

いつまで通院してよいのか、どの時点で後遺障害診断書を書いてもらえばよいのか、など治療継続に関する話も弁護士と協議することができます。

治療費打ち切りを言われた際に弁護士が交渉できる

相手方保険会社から医療機関に対して治療費を直接支払ってもらえる場合があります。これを任意一括対応といいますが、この一括対応についてはある程度期間がたつと保険会社側から打ち切りたいと伝えてくる場合があります。弁護士に依頼している場合は、このような場合にも弁護士が代理人として対応します。もっとも、弁護士が付いていれば一括対応による治療を延長できるとは限りませんが、ある程度延長できる場合もあります。

自賠責への被害者請求の代理も依頼できる

相手方(任意保険会社)への慰謝料等の請求は基本的に症状固定後となりますが、早めに一部でも補償してもらいたい場合、自賠責への被害者請求という方法があります。これについても、弁護士に依頼している場合は弁護士が代理人として行うことができます。

もちろん、その後に後遺障害について被害者請求を行う場合も、弁護士は代理人として行うことができます。

継続的に相談できる

依頼していると、時には電話やメールを使う等して、依頼後解決まで、気楽に相談ができます。この点、ご依頼いただいていない場合は、余裕があれば再相談は可能ですが、原則ご来訪の必要があることとなり、また、ご依頼いただいていないと途中の経過を把握できないので、弁護士も回答が難しい場合も多くなります。

その点、ご依頼いただいていれば優先的にご相談が可能ですし、資料をいただき(相手方に保険会社が付いている場合は弁護士は依頼を受けていると相手方保険会社から各種資料を取り寄せます)、途中の経過も含めて密にご連絡を取っていれば、弁護士も状況を把握しやすいので、ご相談いただいた際に回答しやすいというメリットもあります。

4.まとめ

以上のように、早めに弁護士にご相談、ご依頼いただくことには様々なメリットがあります。また、弁護士費用に関しても当事務所の基準では早めにご依頼いただくことで増えることは基本的にないので、早めのご依頼もご検討いただければ、と思います。

弁護士特約ご利用の場合は各保険会社の基準に寄ります。

当事務所では、事故直後からの依頼も歓迎します。

当事務所では、これまで、交通事故被害者からのご相談、ご依頼を多く受けてきました。交通事故については、交渉、後遺障害の申請(被害者請求)及び異議申し立て、訴訟、など各手続きについて代理人としての業務を行ってきた経験があります。交通事故の被害に遭ってしまい不安な方は、まずはご相談ください。

ご相談ご希望の方は、まずはお電話か電子メールでご予約の上、立川の当事務所までご来訪をお願いします。

なお、事故による負傷等の理由ですぐにはご来訪が難しい場合は、まずはお電話等でのご相談も可能です(ただし、時間帯の予約は必要です。また、電話相談が可能かどうかは、ご来訪が難しい理由等にもよります)。相談だけなら無料なので、ご気楽にご相談ください。

【コラム】交通事故の損害賠償請求(人身)で争点になりやすいこと

2024-02-26

交通事故被害の損害賠償の概要

交通事故の被害に遭うと、相手方本人に対して損害賠償を請求できますが、相手方に任意保険会社が付いていると、多くの場合、任意保険会社が代わりに交渉や支払いをします。(その他、労働関係における使用者や、加害者側の自動車の所有者に請求できる場合もあります)

その際には、人身損害としては、事故の損害に応じて、入通院慰謝料、休業損害、通院交通費、後遺障害慰謝料、逸失利益などの請求が可能です。ただ、必ず被害者の請求通りに支払ってもらえるわけではなく、相手方ないしその保険会社から反論を受けて争点となる場合があります。今回は、そのような争点になりやすい点について解説していきます。

治療期間について

以前にも解説しましたが、治療期間について争われることはよくあります。すなわち、事故による被害の治療として因果関係がある治療期間はいつまでか、ということが問題となります。ここで、症状固定という概念が重要となります。これは、これ以上治療を続けても症状が改善しなくなった時点を指し、それ以後は治療期間に含まれません。

治療期間が重要な理由は、2点あり、1点は、治療期間として認められた期間については治療費を請求できること、もう1点は、治療期間として認められた期間について入通院慰謝料を請求できること、です。

逆に言えば、症状固定後の治療費は原則自己負担となり(健康保険を使うことは手続きを踏めば可能)、慰謝料計算の期間にも参入されないことになります。

それゆえ、いつまでが治療期間か、ということは争点となることがよくあります。通院した期間が長い場合、特に途中から症状の改善が乏しい場合には、ある時点以後は因果関係がないという主張されることが多いです。そのような場合、被害者側の代理人は診療録(カルテ)などを根拠に反論していくことになります。

休業損害

休業損害についても、争われるケースが多いです。事故が原因で仕事を休んだ場合、それによる減収分(及び有給使用分)を加害者側に請求できますが、休業の必要性が問題となるケースが多々あります。すなわち、負傷の程度や回復具合に照らして休業期間の一部または全部について本来休む必要がなかったと主張されることがあります。

それ以外に、特に自営業の場合等には基礎収入の額や休業の事実について争われることも多いです。すなわち、自営業の場合は前年の確定申告をもとに基礎収入を計算するが一般的で、これに従った計算であれば通ることが多いのですが、売り上げの増加を反映させたい場合やそもそも申告が過少であった場合に実際の額で主張したいなど、上記と異なる方法で基礎収入を計算して主張すると、反論が出てくることが多いです。また、休業期間についても企業等に雇用されている場合と比べて立証が難しいという問題があります。また、休業の事実が認められても休業の必要性が問題になりうる点は同様です。

このように、休業損害は必ずしも主張通り認められるとは限りませんが、しかし、休みが長期の場合には金額も大きくなりがちであり、また、事故による生活への影響を補償する重要な制度なので、損害があった場合はしっかり主張することが重要だと思います。なお、負傷により身体的に就労できない日があった場合の他、通院のための欠勤・遅刻・早退でも認められることもあります。

なお、争われた場合には、当時の症状をカルテ等で立証しつつ、仕事の内容も含めて主張、立証して反論していくこととなります。

逸失利益

逸失利益は、後遺障害が残った場合において、症状固定後における就労能力低下による収入の低下のことを指します。14級なら5%、12級なら14%、等、後遺障害の等級に応じて労働能力喪失率の目安が定められています。労働能力喪失の率自体が争われることもなくもないですが、よく争われるのは期間です。すなわち、67歳まで、というのが原則ですが、むち打ちの場合にはより短い期間しか認められないことが多く、その際に、3年か5年か、ということはよく争点となります。被害者側としては基本的に5年で主張したいところですが、3年に限定する主張が加害者側から出てくることは珍しくないです。

その他、実際の減収がないということで認めない、あるいは一部しか認めない、というような主張がされることもあり、それに対しては、減収がないのは本人の努力によるものであるという反論が考えれます。

また、醜状障害について仕事内容を考えると影響がないはずという主張もよくありますが、これについては将来影響がある仕事に就く可能性もあるという反論が考えられます。

後遺障害慰謝料も比較的金額が大きくなりがちな項目であり、納得がいかない場合は、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談して、妥当性について相談するとよいでしょう。

交通費

通院にかかった交通費も加害者側に請求できるのが基本です。それゆえ、合理的なルートであれば、鉄道やバスの運賃について争われることはあまりないです。自家用車のガソリン代(1km15円で計算)

しかし、タクシー代については、必要性が争われることも多いです。すなわち、電車やバスで通えたはずなので敢えてタクシーを使う必要はなかったという主張がされることがあります。これに対しては、怪我の程度や当時の症状などを主張、立証して反論していくこととなります。

過失割合

過失割合についても、争われることがあります。もっとも、一般道における追突の場合はほとんどの場合10:0で通りますし、それ以外の場合でも判例タイムズや赤い本にパターン別の基本的な過失割合と修正要素が出ているので、やみくもに争点化されるわけではありません。争われるのは事実認定の点が多いように思います。ただ、事実関係には基本的に争いがなくても、どちらに何割の過失があるかという評価をめぐって争点となることもあります。

最後に

このように、交通事故の損害賠償請求については、様々な点で加害者側の保険会社等に争われることがあります。そのような場合に被害者が充分な補償を受けるためには、専門的見地からの主張、立証が必要ですので、まずは弁護士にご相談ください。弁護士に御依頼の場合は、弁護士が知識や経験を生かして、代理人として交渉や訴訟を行っていきます。

当事務所では、交通事故の被害者側については相談だけなら無料、また、ご依頼の場合も着手金不要となっています。弁護士特約をご利用してのご依頼も歓迎します(なお、弁護士特約を使えるかどうかは、念のため、ご加入の保険会社に確認しておくことをお勧めします。なお、弁護士特約利用時の報酬基準は原則として保険会社の基準に合わせることとします)。

ご相談ご希望の方は、まずはお電話か電子メールでご予約ください。平日夜や日曜日の相談も可能です。

【コラム】交通事故被害者は労災で救済されるか?

2023-06-09

1, 交通事故被害者が労災から支給を受けることができる場合

労災から支給を受けるためには業務上の災害により負傷したことが必要です。この点、私的な目的で移動中に事故に遭った場合は業務上の災害ではないので、労災から支給を受けることはできません。
一方、仕事中や通勤中に交通事故に遭った場合は、労災から支給を受けられる可能性があります。

2, 労災から支給されるもの、支給されないもの

労災はあくまで労働者の救済が目的です。そこで、交通事故の被害による損害のすべてを補償してくれるわけではありません。具体的には、治療費、休業損害、後遺障害がある場合の逸失利益、については補償がされますが、慰謝料は支給されません。それゆえ、慰謝料については加害者側に請求する必要があります。
また、休業損害は全額が出るわけではなく、元の給与の6割とされています(それ以外に特別支援金として2割が支給されるので実質8割もらえます)。逸失利益についても、労災からの支給は不十分であることが多く、それを超える部分は加害者側に請求することとなります。なお、7級かそれより重い等級の場合、労災からは年金方式で補償されるところ、相手方からの支給とは調整が行われます。

3, 労災の等級認定と自賠責の等級認定

労災も自賠責も建前としては等級認定の基準は同じとされています。しかし、実際には、違う等級が認定されることがあります。一般には、労災のほうが重い等級が認定される傾向があるといわれており、これは労災は労働者の救済を重視しているからだと考えられます。ただ、まれに、自賠責のほうが重い等級が認定されるケースもあるようです。異なる機関が認定するので、時には違いが出るのはやむを得ないでしょう。

4, 訴訟になった場合の自賠責の認定と労災の認定の違い

訴訟になった場合、自賠責の等級認定はそのまま裁判所にも認定してもらえる場合が多いです。例えば、自賠責で後遺障害14級とされたら裁判でも「赤い本」に従って14級の後遺障害慰謝料と、逸失利益が認定される場合が多いです。
一方、労災については、労働者救済のために緩やかに認定されていることは裁判所も理解しているので、必ずしもそのまま通用するとは限りません。しかし、後遺障害を認めるうえで有利な事実の一つとして労災の等級が挙げられる場合もあるので、労災の認定が訴訟で請求していく際に無意味というわけではありません。自賠責の等級が取れなかった場合でも労災の等級認定をとれたのであれば、訴訟をする場合は、主張の根拠として労災の等級認定の事実も主張するとよいでしょう。

5, まずは弁護士にご相談を

仕事中や通勤途中に交通事故に遭った場合、労災保険は心強い味方になりえます。しかし、労災だけでは不十分なのも事実です。なぜなら、労災は慰謝料を支払わないし、休業損害も満額は支給されないなど、必ずしも損害のすべてを補償する仕組みにはなっていないからです。そこで、不足分は原則として加害者に請求することとなるのですが、被害者の方本人で加害者や加害者側の保険会社と交渉することは、負担が大きいうえに、専門的知識の差で不利な示談を強いられることになりかねません。そこで、労災を利用できる場合であるか否かにかかわらず、交通事故の被害者の方には弁護士への相談をお勧めします。
弁護士に依頼すれば、交渉や訴訟は弁護士が代理人として行うので、ご本人様が相手方保険会社と直接やり取りする必要はなくなり、ご自身の精神的ご負担が軽くなるだけではなく、弁護士が専門的知識をもって交渉や訴訟に当たるため、法に従った充分な補償を受けることができると考えられます。特に、慰謝料については、「赤い本」に基づいた充分な補償を受けるためには、専門的知識に基づいた交渉が不可欠です。交通事故の被害に遭われた方は、ぜひ、弁護士にご相談ください。当事務所では、交通事故案件に力を入れており、これまで多くの案件を扱ってきました。もちろん、被害者が労災からも給付を受けていた案件も多く扱っています。
交通事故に関しては、相談料は無料なので、まずは、ご相談いただければ、と思います。ご相談ご希望の方は、お電話か電子メールでご予約の上、立川の事務所にご来訪をお願いします。
なお、事故による負傷等の理由でご来訪が難しい場合、内容や事務所からの距離によってはWEB相談ができる場合もあるので、お問い合わせください

【コラム】非接触事故について 

2023-04-20

非接触事故とは?

交通事故において、加害者の車等とは衝突はしていないけれども加害者の車等の挙動が原因で負傷などの損害が生じたとされる場合があります。これを非接触事故といいます。

他の車の直前に割り込んだために割り込まれた車が避けるために進路を変更してガードレール等にぶつかった場合や、割り込みに対応して急ブレーキをかけざるを得ず、結果、乗っていた人が負傷した場合などが挙げられます。あるいは、オートバイの場合、衝突を避けるために急ハンドルを切ったら転倒した、など他車の運転が原因で転倒が生じて負傷したケースもあります。また、車と車に限らず、歩行者が自動車やオートバイの直前を横断したことで事故を誘発した場合も、同様です。

非接触事故における損害賠償請求

非接触事故でも損害賠償請求は可能でしょうか? 実のところ、損害が発生して、因果関係を示すことができれば、可能だと考えられます。すなわち、事故により負傷をしたこと、および、その原因が加害者の行動にあること、を示せれば、民法上、損害賠償請求が可能です。負傷の事実と、事故と負傷の因果関係が立証できれば、損害賠償請求の内容は一般の事故と同じです。個々の事情に応じて、治療費、慰謝料、休業損害、など各項目について加害者に請求していくことになります。

非接触事故で争点となりやすい点

非接触事故では負傷の有無、因果関係が問題とされやすいところです。すなわち、接触もしていないのだから衝撃はほとんどないはずなのに負傷をするのはおかしいという争い方をされることがあり、特に、相手方の車のみならず他の物との衝突もない事案ではそのような争い方をされる恐れが強いです。また、仮に負傷をしたとしてもそもそも相手方の車の運転が原因で急停車などの負傷の原因となる行為が生じたわけではないという争い方をされる場合があります。

たしかに、実際に衝突が生じた場合と比べると立証が難しいケースもありますが、裁判例を見ると、請求が認められたケースもあります。例えば、東京高裁平成30年8月8日(判タ1455号61頁~67頁)、さいたま地判平成30年5月31日、等は、非接触事故で負傷の事実及び因果関係を認定しています。

非接触事故でもまずは警察に届けを

非接触事故でも、事故である以上、警察への通報、負傷者の救護、が必要です(道路交通法72条1項)。また、警察に届けないと、事故証明も発行されず、加害者の責任を追及することが難しくなってしまいますので、その意味からも、警察への届け出は重要です。

非接触事故についての相談

非接触事故の被害に遭い、相手方保険会社等の対応に納得がいかない場合は、ぜひ、弁護士にご相談ください。弁護士は事件の依頼を受けた場合、代理人として相手方保険会社等と交渉をしたり、場合によっては訴訟を行ったりすることができます。非接触事故については保険会社との交渉が難航することが多いと思いますので、ぜひ、弁護士にご相談いただければ、と思います。

【コラム】相手方に任意保険会社が付いていない場合

2023-04-20

任意保険会社が付いているとき

交通事故に遭ったとき、相手方に任意保険会社が付いていれば、その保険会社と示談交渉をするのが一般的です。なぜなら、任意保険には多くの場合、示談代行サービスが付いていて、加害者の代わりに被害者に対する補償について交渉する権限を持っているからです。弁護士に依頼した場合も、弁護士はまず相手方の任意保険会社と交渉するのが基本的な進め方となります。

任意保険会社が付いていないとき

では、加害者が任意保険に入っていない場合はどうすればよいでしょうか? その場合、まず、考えられるのは、加害者本人に直接交渉することです。もし、加害者本人に十分な資力があれば、これにより解決できる可能性も高いでしょう。
しかし、任意保険に入っていない場合、経済的にも余裕がないケースが多く、加害者本人が十分な賠償をできるとは限りません。その場合、どうすればよいでしょうか?

1, 加害者が業務中に起こした事故であれば使用者に請求する

もし、加害者が業務中に起こした事故であれば、使用者(会社など)に使用者責任を問うことが考えられます。この場合、使用者が保険に加入していれば、その保険から支払われることも期待できます。

2, 運行供用者責任を検討する

もし、加害者がほかの人の車を借りて運転していた場合は、貸していた側に対して運行供用者責任を追及できる可能性があります。ただし、人身損害に関してのみ、当てはまります

3, 上記1,2が難しい場合

しかし、使用者責任や運行供用者責任を追及できるケースは限られてきます。その場合、被害者はどうすればよいのでしょうか? まず、自賠責に被害者請求をすることが考えられます。任意保険に入っていなくても自賠責は入っているはずなので(入っていないと違法になってしまいます)、加害者の自賠責保険に被害者として請求をすることが考えられます。これを被害者請求といい、加害者の自賠責保険会社から書式を取り寄せ、必要な資料を集めて、同自賠責保険会社に提出することで、行うことができます。
ただ、自賠責保険は人身損害にしか使えず、また、金額的にも必ずしも満足をいく額にならないことが多いため、不足分と物損については加害者本人に請求することになります。
なお、自賠責保険では後遺障害の等級認定も可能なので、後遺障害があると考えられる場合は、特に、自賠責への被害者請求は重要になってきます。

まとめ

加害者が任意保険に入っていない場合でも、様々な工夫で、ある程度補償を受けることができるケースが多いです。加害者本人との交渉は一般の方には負担が重いと思いますが、当事務所の弁護士はそのようなケースについても経験を積んでいますので、ぜひ、ご相談ください。

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