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【コラム】物損・・請求へ向けた流れと証拠を残すことの重要性
1.物損として請求できるもの
自動車の事故において、物損として請求できるものの典型は自動車の修理代です。レッカー代や代車代などもそれに付随するものと言えるでしょう。その他、修理が完了しても価値が低下したことについて、評価損を請求できる場合もあります。(全損の場合は、時価及び買換え諸費用の一部の補償)
ただ、物損となりうるのは、それら車に関する損害だけではありません。
- 衣服
- 眼鏡
- ヘルメット
など身に着けていたもの、積んでいた荷物、なども損傷した場合には物損として請求できます。身に着けていたものが損傷するケースは歩行者や自転車、バイク(オートバイ)に乗車中の場合にはよくあります。また、四輪車の場合、業務用に積んでいた道具や荷物が損傷する場合もあり、それらも物損として損害賠償請求が可能です。
2.車やバイクの損害について
車やバイクの損害については、一般にイメージされているのは、見積もりを取り、それを加害者側に送って修理代を請求するという流れだと思います。ただ、加害者側の保険会社(物損は自賠責は対象外なので任意保険会社)がそのまま払ってくれるとは限りません。基本的に、アジャスターという損害を調査する専門家に保険会社が委託し、アジャスターが調査をしたうえで、その内容に基づいて保険会社と修理工場が協定を行ない、金額を確定させてから修理をする、という流れになります。また、この流れであれば、保険会社の同意を得てからの修理となるため、修理代についてのトラブルを防ぐことができます。
一方、保険会社の同意なく修理をすることにはリスクがあると言えるでしょう。保険会社の同意なく修理した場合、争われうるのは、修理範囲の妥当性(事故のついでに別の事故で損傷した部分や経年劣化した部分を修理したのではないかという問題)や修理方法の適切性(板金で済むところを取り換えたのではないか)です。修理をしてしまってから請求して、法的紛争になった場合、それから損傷個所や程度を立証しようとしてもすでに事故車は当時の状態ではないため難しいこともあります。そういう争いを避けるためにも、保険会社と修理工場の協定が済んでから、保険会社の同意を得て修理する方が良いでしょう。
証拠保全としては、事故直後に写真を撮っておくことが重要です。全体の写真(マンバープレートを含む)と事故で損傷した部分の写真が必要です。ただ、一般の方が撮影しても的確に取れるとは限らないので、修理工場の方に撮影してもらう、など専門の方に任せたほうが良いと思います。また、追加で撮影する必要が出てくる場合もあるので、上記の協定が締結できるまでは、手を加えないことが望ましいと考えられます。
3.身に着けていたものや車に積んでいたものの損害について
衣服やヘルメット、道具や荷物、などについては、事故で損傷した事実と、その価格が明らかになれば、加害者側に損害賠償を求めることができます。そのためには、写真で損傷の事実を明らかにすることが一般的であり、事故後まず写真を撮ると良いでしょう。しかし、現物を捨てずに置いておくことが望ましいです。なぜなら、写真の撮り方が不適切でわからないという場合や、現物を見ないとわかりにくいということもあるからです。
また、価格については、レシートや、オンラインでの購入の場合は購入の記録が残っていると問題が起きにくいです。ただ、レシート等がなくても、商品名等を特定できれば、ある程度の額が認められる場合も多いです。
ただ、車の価値と同じで、時間が経つと価値は下がるので、新品の価格で、というわけにはいかず、購入後の年数に応じて減じられた額での請求となります。
4.早期に弁護士にご相談ください
人身と物損の両方がある場合でも物損については先に示談することが多いです。また、実際、車やバイクが損傷した場合は早めに修理しないとその後の生活や仕事に差しさわりがあることも多いと思います。
ただ、上記のように物損についてもとりあえず修理してしまうと後で相手方保険会社に請求する際に問題が生じる恐れがあります。また、評価損や、全損の場合の買い替え諸経費など争いが生じる場合もあります。
さらには、双方に過失がある(可能性がある)事故の場合、示談の際には過失割合も問題になります。過失分を差し引いた額しか相手方に請求できないし、事故の過失に相当する分は相手方の修理代等を支払わないといけないからです。また、物損段階での過失割合の合意がのちに行われる人身の交渉における過失割合に実質的に影響することもあり、物損段階の過失割合も軽視することはできません。
そこで、まずは物損についての交渉の段階でも、弁護士に相談することをお勧めします。
物損だけの依頼の場合でも、弁護士特約を使える場合は、弁護士報酬は基本的に保険会社が負担しますし、弁護士特約がない場合でも人身損害もある場合は弁護士への依頼で結果的に慰謝料の増額などが見込める場合が多く(初期の段階ではまだ提示されていないのでいくら増額できたかは見えにくいとは思いますが、一般的に本人での対応だと慰謝料の提示は低いことが多いので)、全体で考えれば依頼をするメリットがある場合も多くあります。
当事務所の場合、相談だけなら無料ですので、まずはご相談頂ければ、と思います。
【コラム】身の回りの品についての物損
物損とは
物損とは、その名の通り、物的な損害のことです。交通事故で、当事者の自動車やバイクが損傷した場合が典型です。物損だけの事故(物損事故。物件事故とも言います)の場合のみならず、人身事故においても物損は問題になります。
物損の補償についての考え方
物損については、修理が可能な場合は修理費を加害者側に請求できるのが原則です。ただし、時価と修理費を比べて修理費のほうが高い場合は原則として時価の賠償を求めることができるに留まります。例えば、車が損傷して、修理費は100万円だけども時価は50万円という場合には、100万円の修理代を出してもらうことは基本的に認められず、50万円が賠償額の基準となります(買い替え諸費用についても一定範囲で請求できます)。
車やバイク以外の物損について
車はバイク以外の物についても事故で損傷すれば、補償の対象になります。被害者が歩行者であったり、自転車やオートバイに乗っていた場合には、事故で服が破れたり、腕時計が壊れたり、というように身に着けていたものが損傷することはよくありますが、それらも補償の対象となります。もちろん、自転車が壊れた場合も同様です。
被害者が自動車に乗っていた場合も、衝撃で車内の物が壊れた場合は、同様に、損害賠償請求の対象になりえます。
身の回りの品の物損の評価の問題
では、時計や服など、身の回りの品が損傷した場合、どのようにして被害額を確定すればよいでしょうか。ここでは、全損で修理が難しいことを前提に議論をします。
まず、領収書があれば、その額を元に、経年による減価償却を考慮した金額を出すことになります。つまり、時間が経てば価値は下がるという前提で、購入後の経過年数に応じて価値を算出するわけです。経年とともにどの程度価値が下がるかはその物の種類によると考えられます。
一方、領収書がない場合、破損した品の写真などから型番が分かれば、それを前提に評価額を出すことはできます。ただし、領収書がない場合、購入時点を証明することが難しいという欠点はあります。領収書がなくても、オンライン販売の購入記録や、クレジットカードの利用明細などからわかる場合もありますので、領収書が手元にない場合は、それらがないかも調べてみましょう。
厳密な金額がわからない場合でも、写真などでどのようなものを身に着けていてどのように損傷したのかを示すことができれば、「少なくともいくらの価値はある」という形で最低限の額での損害賠償が認められる場合もあります。事故で損傷したことに間違いがないのであれば、最初からあきらめるのではなく、まずは交渉してみることが重要だと思います。
いずれにせよ、事故で破損した事実を示すために写真は重要な証拠になります。事故直後の状態を示すために、できるだけ早く撮影しておきましょう。また、念のため、破損した物は損害賠償の交渉ないし訴訟が終わるまで手元に置いておくと良いでしょう。
弁護士に依頼した場合
弁護士に依頼している場合は、このような身の回りのものの物損についての計算と交渉も弁護士に任せることができます。特に、弁護士特約がある場合は、物損だけの依頼でも基本的に費用が持ち出しになることはないはずなので、物損のみの場合も遠慮なくご相談頂ければ、と思います。
【コラム】物損事故のご相談
当事務所では、物損事故(物件事故)について、ご相談・ご依頼を受けることもよくあります。
物損事故で争点になりやすい問題
代表的には、以下のような類型が挙げられます。
1、経済的全損の場合(争われる場合も含む)
経済的全損を主張されている場合に、実際には買い替え価格の方が高いと主張して修理費の請求をしたいというケース、また、経済的全損であることは認めるけれども買い替えにかかる価格として保険会社から示された額が適正ではないというケース、があります。価格については、買い替え諸費用のうち登録費用や自動車取得税などは含めることが認められる傾向があります。買い替え諸費用をどこまで認めてもらえるか、というのは争点になりやすいところです。
2、評価損について
評価損とは、事故車を修理してもらったけれどもなお価値の低下が残る場合の、その価値の低下分のことです。比較的新しい自動車で、それなりにもともとの価格が高い場合で、骨格に及ぶ損傷があった場合、に認められやすい傾向があります。評価損については、実際の評価の低下を図るよりも、修理費に対する比率(10%~30%程度)で計算することが一般的になっています。
3、過失割合について
過失割合について争点になりうるのは、人身も物損も同じです。過失割合があるとされてしまうと、補償の額がその分減るのみならず、相手方の損害について当方の過失割合に基づいて補償をする必要が出てきてしまいます。過失割合については、個々の事案について、「判例タイムズ」や「赤い本」の図に当てはめて判断していくのが、原則です。交渉でまとまらない場合には、訴訟を行うこともあります。
物損事故に関して弁護士に依頼
物損事故に関しても、弁護士に依頼することができます。ただ、弁護士特約がない場合は、多くの場合、費用の方が高くついてしまうので、ご依頼の前に、弁護士特約があるかどうか、ご確認いただければ、と思います。
物損だけではなく、事故で怪我をしている場合は、いずれ人身傷害についても慰謝料などの交渉する必要があるので、弁特がなくても、多くの場合、費用の面で問題はありません(当事務所の報酬体系の場合。通常、交通事故全体としてのご依頼になるので、人身と物損両方ある場合は、併せてのご依頼という形になります)。
いずれにせよ、当事務所ではご相談は無料で、その際に、獲得できる補償額の目安と弁護士費用についてご説明させて頂きます。まずは、電話か電子メールでご予約の上、一度、当事務所まで、ご相談に来ていただければ、と思います。
【コラム】経済的全損といわれたら
交通事故にあった自動車の修理を希望しても、修理するよりも買い替えた方が安いような場合には、修理代全額が相手方から支払ってもらえないことが、しばしばあります。このような状態を経済的全損と呼びます。このコラムでは、経済的全損について解説します。
1 経済的全損とは
経済的全損というのは、交通事故で損傷した自動車の修理費用の方が、時価額に買替諸費用を加えたものより高い場合をいいます。事故にあった車を修理するより、買い替えた方が安い場合には、車の買い替えに必要な費用の限度でしか、賠償してもらえない、ということです。例えば、修理すると100万円かかる車について、買い替えると50万円で済む場合には、いくら修理してほしくても、50万円までしか賠償してもらえないということです。
2 自動車の時価額はどうやって決めるのか
車両の時価額については、有限会社オートガイドが発行している通称レッドブック(正式名称はオートガイド自動車価格月報)と呼ばれる本に載っている価格が基準にされる事が多いです。この本には、車種や年式等ごとに、中古車の小売価格が載っています。相手方保険会社から、レッドブックの該当ページのコピーが提示され、これが時価だと言われることが多いです。実際に裁判でも、レッドブックが時価額の目安とされることもあります。
しかし、いざ実際に中古車店に出向き、事故車と同じような車を買おうとしても、レッドブックの金額では足りないということがよくあり、レッドブックの金額では到底納得ができないという場合も少なくありません。
そのような場合には、中古車販売のインターネットのサイト等を使って、なるべく事故車と似た状態の車の市場での販売価格を調査してみるという方法があります。実際の販売価格を調べてみると、車種と年式が同じでも、走行距離や使用状態によって、金額がかなり違うこともあります。弁護士にご依頼いただいた場合には、事故車と全く同じ状態の車を見つけることは難しいことが多いので、似たようなものをいくつか収集して、その中の平均値を取ったりして、少しでも高い金額になるよう、粘り強く交渉します。このような交渉により、経済的全損の場合であっても、相手方から支払ってもらう時価額+買替諸費用額を、少しでも増やせるよう、弁護士は努力します。
3 まとめ
車の修理費用については、レッドブック等の資料を提示されると、いかにも根拠があるように思えて、よく調べないまま保険会社の提示額で合意してしまうことも少なくないと思います。しかし、それはあくまで1つの参考値であり、ご自身の自動車の時価が適正に評価されていない可能性もあります。ほんとうにその金額が適正なのか、最終的に合意をする前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
【コラム】物損事故の補償
物損事故に関して問題になりうる項目として複数のものが挙げられます。
修理代
事故で自動車が破損した場合、基本的には加害者に対して修理代の請求ができます。ただし、自動車の価値を上回る修理代がかかる場合は、修理代ではなく、価値の補償に留まることになります。これを経済的全損と呼んでいます。価値は購入時ではなく事故時点の価値ということになります。すなわち、減価償却を考慮するわけです。その際に、車の価値の調べ方としては、レッドブックを使う、市場価格をネットで調査する、などの方法があります。ここで、買い替えにかかる諸費用がどこまで認められるかについて論争があります。
評価損
修理を行っても自動車の価値が事故前に戻るとは限りません。特にフレームに至る損傷があった場合には、それ以後中古市場での価値が下がる恐れが高いです。そのような場合に、価値の低下を補償するのが評価損という仕組みです。ただし、必ず認められるわけではなく、価値が高く新しい車の場合は認められる可能性が高いですが、それ以外の場合は認められにくいのが実態です。また、補償の額について、実際に下がった価値の分を補償するという方式をとる場合は稀で、多くの場合は修理代を基準に、その10%~30%の範囲内で決めることが多いです(比率は損傷の程度等により異なります)。
代車費用
車の修理の間に必要だった代車の費用が認められる場合があります。一般論として、仕事で使う車の場合は認められやすいですが、自家用車でもともと利用頻度が低い場合や代替交通機関がある場合には争われる可能性があります。また、期間についても争われることがあります。すなわち、修理をすぐにせずに長く乗っていると、いつまでは合理的だったか、ということが問題になりえます。
車以外に破損した物の補償
車以外にも、カーナビが破損した、積んでいた荷物が破損した、バイク事故で服が破れた、というような場合には、事故と相当因果関係があれば補償対象となります。ただ、これらについても購入時の価格ではなく減価償却を行なった上での事故時での価格であることに注意が必要です。また、オートバイの事故の時によくある服や腕時計などの破損については購入価格の証明が難しい場合もあり、価格の証明に工夫が必要です(示談交渉だと、「少なくともこれくらいの価値はあったはず」というような大まかな推定で示談に至る場合もあります)。
物損事故と弁護士への依頼
まず、人身傷害を伴う場合に弁護士に依頼した場合には、物損事故の補償の話がまだ終わっていない場合は、弁護士が物損の分も交渉します。
一方、物損だけの場合に弁護士に依頼することにメリットがあるかどうかは、ケースによります。すなわち、弁護士が交渉することで金額が増えるかどうか、という問題の他に、仮に増えたとしても弁護士費用を上回るのであればメリットがないといえます。この点、弁護士特約が使える場合は、弁護士費用は保険会社が払ってくれるため、若干でも補償が増えれば、依頼のメリットはあるといえるでしょう。