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【コラム】自営業者の休業損害…2個の問題点

2021-08-25

1, 自営業者の休業損害について

自営業者とは、被雇用者ではなく、自ら事業を行なって生計を立てている人のことを指し、いわゆる個人事業主のことです。法人になっていると、また異なる論点があるので、法人化している場合についてはまた別のページで触れることとし、この記事では、個人で事業をしている場合について述べることとします。

2, 自営業者の休業損害の算出に関する基本的な考え方

休業損害の算出方法として、会社員など給与で生計を立てている場合は、事故前3か月間の収入を元に1日当たりの賃金を算出し、それに休業日数をかける、という方法で算出ができます。
一方、自営業者の場合、前年度の申告を元に基礎収入を算出し、休業期間をかける、という方法で算出します。

3, 自営業者の休業損害を算出する場合の2個の問題点

① 基礎収入の算出方法について

前年度の申告を元に基礎収入を算出するわけですが、売り上げをそのまま基礎収入とするわけには行きません。なぜなら、経費が発生しているはずだからです。基本的な考え方としては、売り上げから経費を引いたものが所得になるわけですが、この所得を基礎収入とすればよいかというと、これも不都合が生じます。なぜなら、休業していても固定経費はかかるからです。そこで、所得と固定経費を合計した額を基礎収入とする、ということになります。
もっとも、どれが固定経費で、どれが変動経費か、ということを実質的に考えると線引きが難しいところもあり、必ずしも割り切れるものではありません。個々のケースに応じて丁寧な検討が必要です。 

② 休業日数について

自営業者の場合、会社員のように勤め先に休業証明書を発行してもらうというわけにはいきません。そこで、休業日数の立証をどうするか、という問題が生じます。また、実際、完全には休業していなかったけれども療養のために短い時間しか業務ができなかった、とか、自宅兼オフィスで少しだけ仕事をしていた、というようなケースも珍しくありません。
そこで、完全に休業していた場合は、基礎収入に日数をそのままかけるとしても、部分的な休業であった場合には、休業せざるを得なかった比率をかけて計算するという形をとらざるを得ません。例えば、事故から1か月は100%、1か月後~3か月後は50%、以後症状固定までは10%、というような比率を考えて、それに基づいて計算するわけです(上記比率はあくまで一例です)。その比率は、その期間の症状をおもな要素として決めることになるので、診断書やカルテが重要になってきます。もっとも、交渉の段階ではカルテの開示請求までは行なわずに、診断書をおもな資料として検討することも多いです。その他、物損事故に関する資料(車の損傷が甚だしい場合は負傷の程度も甚だしいことが推測できる)、本人陳述書、なども休業の必要性を根拠づける資料となるでしょう。
実際の休業の状態を証明することは個人事業主の場合なかなかむつかしい場合も多いですが、このように様々な資料を用いてどの程度休業を強いられたか、を推認することはよく行われています。

なお、上記のような方法を採らずに、単純に、事故前の年と事故のあった年の基礎収入を比べるという方な方法も考えられなくもないです。しかし、そうすると、事故が起きた年は事故のあった日から事故の影響が出てくるわけで、その所得が事故後の状態を表しているとは言い切れないので、このような方法を用いるケースは少ないように思います。

4, 自営業者の方が休業損害で悩んでおられる場合は

自営業者の休業損害の計算は複雑です。申告資料から基礎収入を算出するという経理の知識が必要な作業もあれば、休業日数の計算においては事実認定と当てはめという法律的な考え方も必要となってきます。複雑で手間のかかる作業なので、ご本人様が行うよりは、ぜひ、交通事故に詳しい弁護士にご依頼頂ければ、と思います。
この点、多摩中央法律事務所では、多くの交通事故案件を扱ってきました。もちろん、その中には、自営業者の方の休業損害が争点となったケースも多くあります。当事務所が交通事故案件を扱い始めた比較的初期から、最近に至るまで、自営業者の方の休業損害の請求を行なった案件は珍しくありませんが、当事務所の弁護士は、その一つ一つにおいて、丁寧な分析と交渉を心掛けてきました。自営業者の方で休業損害のことで悩んでおられる方は、ぜひ、当事務所にご相談ください。

【コラム】主婦の休業損害

2020-06-12

1、主婦にも休業損害は認められるか?

イ、そもそも休業損害とは?

交通事故で仕事を休まないといけなかった場合に、その損失を加害者側に請求することができるのが休業損害という制度です。会社員や公務員、自営業者のように収入がある方の場合は、イメージしやすいと思います。仕事に行けなかった分、通常はその分実際に収入が減ってしまうからです。

 なお、逸失利益が後遺障害が原因の労働能力喪失に対する補償であるのに対して、休業損害治療中休業による損害を補償するものです。すなわち、治癒または症状固定までの時期については休業損害の対象ですが、それ以降は、逸失利益の問題であり、休業損害の対象ではないといえます。

ロ、主婦の場合の問題

 では、主婦、特に専業主婦の場合は、もともと収入はゼロですから、事故に遭っても減らないようにも思えます。しかし、専業主婦も家事をすることによって家庭に貢献しており、事故の被害で家事ができなかったことに対する経済的損失が観念できるはずです。では、主婦の休業損害はどのように計算すればよいのでしょうか?

2、主婦休損の計算方法

 主婦の場合、実際に勤め先から給与を得ていたわけではないので、基礎収入をどのように計算するか、が問題となります。この点、基本的に、賃金センサスの値を用いることになっています。賃金センサスというのは国による統計的な資料であり、年齢、性別、学歴に応じた平均値が記載されています。このうち、女性の平均を基礎収入として用いることになっています。

 すなわち、1日当たりの基礎収入に実際の休業日数をかけて計算するのが基本的な方法ですが、その基礎収入として、賃金センサスの女性の平均値を使うのです。

3、休業していたかどうかはどのように判断するか?

 では、休業していたかどうかはどのようにして判断するのでしょうか? サラリーマンであれば会社に休業証明書を書いてもらえばよいですが、主婦の場合は雇用主がいるわけではないので、正式の証明書のようなものは存在しません。そこで、本人の陳述と、診断書などに記された症状、通院の状況、事故の態様などから事故と因果関係のある休業の範囲を明らかにしていくという方法をとります。

 また、事故後ある日まで完全に休業し、その翌日から普通に家事をすることができたという、0%か100%かという計算をするとは限らず、事故直後から何日目までは100%、その翌日から何日目までは50%、というような形で、途中からは部分的には家事ができたとして計算することもあります。また、それほど怪我が重くなかった場合には、通院した日について、通院にかかった時間を考慮して、通院日だけは休業損害を認めるという場合もあります。

 主婦の場合は休業の事実を直接的に証明することが難しい場合が多く、被害者側の弁護士は様々な資料から推定して主張し、加害者側の保険会社と交渉していくことが多いです。その上で、一定のところで妥協が成立するか、難しい場合は、訴訟で請求するか、という判断が求められることになります

4、まずは弁護士にご相談を

 治療費や慰謝料のようにわかりやすい項目と異なり、主婦の休業損害は詳しくない人には見落とされやすい項目です。この点、弁護士にご依頼頂ければ、どのような請求が可能か、丁寧に確認したうえで交渉を進めてまいります。

【コラム】自営業者の休業損害

2020-03-17

交通事故に遭ったことにより、仕事を休み収入が減った場合、その減った金額を休業損害として加害者に請求できます。休業損害は、原則、日給×休業日数で計算します。この休業損害を請求するにあたり、自営業の方は、会社勤めの方(給与所得者)と比べて、以下の3つの点が問題になることが多いです。

 

1 交通事故による減収があるのか

自営の方は、交通事故の後、収入が減っていたとしても、その原因が交通事故で仕事を休んだからなのか、あるいは単純に仕事が少なかった等他の原因があるのか、問題になることがあります。

交通事故による減収があるのか問題になった場合には、具体的にどんな仕事を、なぜ休んだのか(入通院したから、あるいは具体的にどんな症状があったからできなかったのか)を細かく説明し、交通事故が原因であることを証明する必要があります。

 

2 休業日数

 入院した場合には、入院日数=休業日数と考えることができますが、通院の場合には、何日仕事を休んだのか、自営の方は他に証明してくれる人がいないため、問題になることがあります。

1つの方法としては、通院日数を休業日数として計算する方法もあります。ただし、通院期間が長期間に及ぶ場合等には、全ての通院日数が休業日数として認められないこともあるので注意が必要です。

 

3 日給

 自営業の方は、事故前年の確定申告をもとに日給を計算することが多いです。日給の計算にあたっては、確定申告書上の経費を、固定経費と変動経費に分けて計算するので、経費の内容を細かく分析する必要があります。

 また、自営の場合、年によって所得が多かったり少なかったりと波があることが多いですよね。事故前年が、たまたま所得が低い年ですと、事故時の本来の日給よりも、大幅に少ない額になってしまうことがあります。そういう場合には、事故前年よりもっと前の確定申告を提出するなどして、正しい日給額を積極的に証明する必要があります。

 

以上、自営の方が休業損害を請求する場合には、①そもそも減収があるのか、あるとして②休業日数や③日給をどのように計算するのか、3つの点が問題になることが多いことを説明させていただきました。自営の方は特に、症状や仕事内容の説明、確定申告書の丁寧な読み込みが必要で、お困りの方も多いのではないでしょうか。自営業の方の休業損害の請求にあたっては、弁護士がお役に立てる場面が多いと思いますので、ぜひ一度、当事務所にご相談下さい。

【コラム】主婦の休業損害

2020-01-26

交通事故に遭って、しばらく仕事をできなかった場合、サラリーマンや自営業など収益を生む仕事をしていれば、休業損害を請求するという考え方はすぐに出てくると思います。

では、主婦の場合はどうでしょうか?

もともと収入がない、ということで休業損害を請求するという発想自体が出てこない方もおられると思います。しかし、主婦も立派な仕事、それが自己の影響でできない時期があったのに何も補償がないのは間違ったことですし、実際、主婦の場合も休業損害は請求できます。

この際、基礎となる収入は賃金センサスにより計算するのが一般的です。これは厚生労働省が作成している統計で、簡単に言えば、様々な階層ごとの平均収入を調査して作成された統計資料です。主婦の休業損害ではこれを用いて、収入の額とします。

では、期間はどうするのでしょうか?

この点、サラリーマンであれば、実際に会社を休んだ日を会社に証明してもらえば休んだ事実を証明できます(もっとも、その全期間について認められるかはケースによりますが)。

しかし、主婦の場合、家事を何日間休んだか、という客観的な証拠は通常ありません。そこで、けがの程度や回復の具合から、どれくらいの期間働けなかったか、を判断することになります。この際、事故による負傷や回復状況について記された診断書の他に、事故の程度の指標として車の修理の見積もりないし請求書なども参考にされることがあります。その他医師の意見書などが提出できれば証拠となりえます。

また、事故後ある程度の期間は100%で計算し、ある時点からある時点までは50%で計算する、というような、回復状況を反映した段階的な認定がなされることもあります。

事故から近い時期に関しては比較的認定されやすく、事故から時間が経った時期については認定がされにくい、というのは主婦以外の場合も同様ですが、主婦の場合は、休業した事実自体が立証しづらいため、基本的に事故の程度や症状等から推認するという方法をとらざるを得ないでしょう。

なお、パートなどで収入があり、それが賃金センサスを上回っていた場合は、実際の収入を前提に計算します。

いずれにせよ、主婦でも仕事(家事)に支障が出た場合には原則として休業損害を請求できるので、負傷の程度が重い場合には、その請求を忘れないようにしましょう。

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