【コラム】加害者の態度が悪かったことによる慰謝料の増額

慰謝料の標準的な決定方法

交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります。入通院慰謝料は入院・通院の期間に応じて計算がなされ、後遺障害慰謝料は1級から14級の後遺障害等級認定に基づいて決まるのが原則です。その計算方法はいわゆる「赤い本」に記載されており、実務においては概ねこれに沿った計算が採用されています。
このように計算方法を示すことで、客観的な事実関係に基づいて公平な算出ができるように工夫がされているということができます。

加害者の事故後の態度を理由とした増額は可能か?

では、加害者の事故後の態度が悪かったことを理由に増額を求めることはできないでしょうか? すなわち、事故被害者から見れば、加害者が不誠実な態度をとった場合には、それだけ精神的苦痛が増すのだから、慰謝料を増額されるべきであるとの思いがあっても不思議ではありません。また、慰謝料は被害者の精神的苦痛に対して加害者が支払わなくてはならないものですから、被害者の精神的苦痛の程度を考えて増額するということは筋が通ったことにも思えます。もちろん、公平な計算ができるように客観的な事情から慰謝料の額を計算できる一般的な計算方法を示したところに「赤い本」の表の意義はあるのですが、しかし、個々の事情を一切考慮しないこともまた公平ではなく、被害者救済に反することになってしまうでしょう。
そこで、裁判例も、加害者の被害者に対する態度や、取り調べに対する対応、刑事裁判での態度、などによって慰謝料を通常より多く認めているケースがあります。

慰謝料の増額が認められた代表的な事例の特徴

慰謝料の増額が認められた事例で、その理由として挙げられた事故後の事由として、

  • ひき逃げ(救護義務・報告義務違反)
  • 自分の責任を否定して損害賠償を拒んでいたこと
  • 刑事裁判で虚偽の供述をしたこと
  • 車の修理などによる隠蔽工作
  • 警察の取り調べに対する対応(例えば、警察官に別人が運転していたと述べたこと、事実と異なる加害者に有利な調書が作成されていることに気が付きながら訂正を求めなかったこと、など)

などがあります。(「赤い本」2021年版237頁~244頁参照)
なお、これらの事案では、事故の態様(飲酒運転やよそ見運転など)も併せて考慮された結果、慰謝料が増額されている事案も多いです。

納得がいかない場合は弁護士に相談を

加害者の不誠実な態度として被害者にとって納得がいかない事情は上記に限られるものではありません。加害者の様々な不誠実な行動が被害者を苦しめているのは事実であり、それらによる苦痛が、交通事故における通常の損害賠償で填補しきれない程度に達している場合は、「赤い本」の表による算定を超えて慰謝料が認められるべきであるということは、充分理のある事だと思います。
加害者の態度を理由とした慰謝料の増額は、任意保険会社との交渉で認められる場合もあり、必ずしも訴訟をしないと認められないわけではありません。もちろん、増額が認められる場合もあれば、「赤い本」の表を上回ることは難しい場合もありますが、いずれの場合でも、弁護士はそれぞれの事案に応じた適切な賠償を得られるよう、交渉に尽力いたします。
交通事故の被害に遭い、加害者の態度に納得がいかないという場合は、まずは、弁護士にご相談ください。

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