【コラム】陳述書とは何か?

「陳述書」についての疑問

交通事故についての裁判で、陳述書を出す場合があります。陳述書というのは、どういうものでしょうか?  また、どういう意味があるのでしょうか? これらの疑問について今日はお答えしようと思います。

なお、ここでは民事訴訟について解説させて頂き、刑事訴訟については触れないことにします。

そもそも陳述書とは?

陳述書とか、当事者(原告、被告)や、第三者が、事実関係などを書いて裁判所に証拠として提出する書面です。証拠ですので、主張を書いた準備書面等とは意味が異なります。すなわち、訴状や答弁書、準備書面、は当事者が自らの主張や、相手方の主張に対する認否を述べるために提出するものであり、準備書面等にいくら自分自身が経験したことを書いても、それは証拠とはなりません。もちろん、それは、こういう事実があったという主張にはなるので、法律上の効果を生む事実であれば記載すべきなのですが、それとは別に証拠が必要です。

そこで、当事者や目撃者に事故に関する事実について書面に書いてもらって、提出することがあります。これが陳述書です。

なぜ陳述書が必要か?

物証がある場合、例えば、ドライブレコーダーの画像、防犯カメラの画像、などは強力な証拠になりますが、それらがない事案も多くあります。また、あったとしてもそれだけで充分とは限りません。それらの画像に出ていない情報が必要なこともあります。また、画像がなく、実況見分調書から事故時の状況を立証しようとすると、警察官が業務の上で作成したものなので一般的な書類よりは信憑性はあるとはいえ、やはり、一種の間接証拠なので、当時の状況を適切に表しているとは限りません。

そこで、当事者や目撃者から経験したことを裁判所に直接伝える手段として陳述書が考えられるわけです。

それ以外にも、どういう痛みがいつからいつ頃まであったか、事故によるけがで日常生活にどういう支障が出たか、仕事にどういう影響があったか、後遺障害で仕事にどの程度影響が出ているか、どういう理由で精神的苦痛が大きかったか、など当事者でないとわからなかったり、当事者がより詳しく知っていると思われる事項について立証するために陳述書が用いられることもあります。あるいは、事故の後遺障害で介護が必要になった場合に被害者本人の大変さや家族の介護の負担の立証のために家族の方の陳述書を用意する、ということもあります。

陳述書に書く内容は立証目的によって異なってきますので、一様には言えませんが、いずれの場合も、あくまで事実を書くものであり、意見を書くものではないことに注意が必要です。

陳述書が用いられる場面

陳述書は、それで事実を立証することを目的に、いわば単独で提出されることもありますが、一方で、当事者尋問や証人尋問のための準備という意味で提出されることもあります。後者の場合は、陳述書に沿って当事者尋問・証人尋問をするわけです。

では、陳述書自体も証拠になるのになぜ敢えてそれと元に当事者尋問・証人尋問をするのでしょうか。それは、陳述書が比較的弱い証拠であり、一方、当事者や第三者の証言はそれと比べれば比較的強い証拠だからです。もっとも、証言も人証ですので、ドライブレコーダーの画像や防犯カメラの画像のような客観的な証拠ほどではありませんが、陳述書よりは証拠としての力が強いと考えられています。なぜなら、尋問は相手方による反対尋問を経ているからです。反対尋問では、相手方によって証言の矛盾を突いたり、記憶が曖昧ではないか、など証言の確からしさを崩す方向で質問がなされます。また、通常、裁判官からも裁判官が疑問を持った点について補充の質問が行われます。それらを経てもなお揺るがない、合理的な証言であれば、信憑性が高いということになり、証拠としての力は強くなります。陳述書の場合は、このような過程を経ていないため、証言と比べると証明力は弱いと考えられています。

ただ、だからといって、例えば事故の目撃者が数人いるときに全員を証人尋問すれば時間がかかりすぎるし、同じ車に複数で乗っていて全員が事故の瞬間について話したいことがあるという場合に全員に尋問をするのも、やはり、訴訟の効率を考えると難しいでしょう。そのような場合に、1名だけを尋問して、残りの方からは陳述書を出してもらう、というような方法も考えられます。あるいは、目撃者が協力はするけど出廷まではしたくない、という場合も、陳述書の提出だけにする、ということも考えられます。陳述書は、当事者尋問・証人尋問、と比べると、比較的負担を少なく用意できる点はメリットですが、ただ、証拠としての力は、さほど強くはないと考えておくべきでしょう。

もっとも、上記のように、当事者尋問・証人尋問の準備として出すこともあり、その場合は、主尋問で何を聞く予定かということについて自分の依頼している弁護士と打ち合わせをしておくことはもちろん、反対尋問で何を聞かれるかも想定して、よく内容を練る必要があります。

「陳述書」について迷ったら

陳述書について迷ったら、当事者の方の場合、依頼している弁護士に相談しましょう。もちろん、自身の経験した事実を裁判官に伝えるためのものであり、事実を正確にかくべきであることはいうまでもありません。しかし、どういうことに触れるべきか、記憶やや曖昧な場合は書かない方が良いのか、その時の自分の感情についても述べるべきか、など書いていると迷うことも多いと思います。それゆえ、弁護士に依頼して訴訟を行なっている場合は、依頼している弁護士に相談することをお勧めします。

第三者の立場で陳述書の作成を頼まれている場合も、原告・被告いずれかの側から頼まれているはずなので、頼んできた側の代理人弁護士に書き方については聞いてみると良いと思います。

このように、訴訟の進行の中でどうしてよいか迷ったときに専門家である弁護士に相談できるということも、交通事故訴訟に関して弁護士に依頼するメリットの一つだと言えるでしょう。

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