【コラム】四輪車どうしの正面衝突の過失割合

1, 正面衝突事故の過失割合の原則

センターラインがある道路での片方の車のセンターラインを越えて走行したために起きた事故については、過失割合は原則として、10:0とされます。(判例タイムズ38【150】図) 道路の左側を走ることは道交法で定められており、かつ、センターラインがある場合はどこまでが左側であるかは明白なので、それを逸脱して走行した側が責任をすべて負うというのが基本的な考え方です。逆に言えば、左側の車線内を走るというルールを守っていれば、対向車との関係では、原則として、過失はないということです。
あくまで原則なので、車線内を走行していた方の車にも回避可能性があった場合等には修正される場合があるとされていますが(同図の解説参照)、例外的な場合であり、センターラインオーバーの事故の大半が10:0で解決されていると思われます。
もっとも、例えば、見通しが良い道路で、対向車がわずかにセンターラインを越えて走ってきているのがかなり手前から見えて、少しハンドルを左に切れば回避できたのに、漫然と車線内のセンターライン寄りを走行して衝突した、というような場合は、車線内を走行していたとしても過失あり、とされる可能性はあると思います。

なお、上記判例タイムズ150図で例外的に10:0にならない場合として例示されているのが、車線内を走っている側の車に著しい過失や重過失があった場合です。すなわち、著しい過失(15km以上30km未満の速度違反、酒気帯び運転、携帯電話で話しながらの運転、など)があれば10ポイント、重過失(30km以上の速度違反、酒酔い運転、居眠り運転、など)があれば20ポイント、車線内を走っていた側の車にも過失が認められることになります。  
もっとも、その場合でも、車線をはみ出した側の車の速度違反や追い越し禁止場所での追い越し、著しい過失、重過失、などにより、センターラインオーバーの車に不利な方向に修正がなされうることになっています。
このように、センターラインオーバー事故でも個別の要素により過失割合が修正される場合はあるので、納得がいかない場合には、個々の事実関係を丁寧に検討して主張していくことが必要です。

2, センターラインがない場合

センターラインがない場合については、上記判例タイムズの解説は「余り幅員が広くなく中央線の表示もない道路」については、規範の明確性に差があり、対向車の進路に対する相当の注意が要求されてしかるべき、という趣旨の記載があります。ここで規範というのは道路の左側を走るべき、との規範のことだと解されます。センターラインの有無だけではなく道路の幅にも言及していることには注意が必要ですが、この記載を見る限り、道幅が狭くセンターラインがない場合は、必ずしも10:0にならないと考えられます。
センターラインがない場合については、双方の車両の走行の状況に照らして、個別に判断することになるでしょう。

3, まとめ

対向車との衝突事故においては、センターラインがあるかないか、にまず注目する必要があります。その上で、センターラインがあった場合は、基本的に、判例タイムズ【150】を適用し、修正要素を検討しましょう。ただし、道交法17条5項各号に該当して道路中央から右の部分にはみ出して通行することができる場合には図【150】は適用されないことが明示されています(タイムズ283頁)。すなわち、図【150】は左側を走行しないといけないという道路交通法上の決まりがあるがゆえに原則10:0としたのであって、その前提が当てはまらない場合には、適用されないわけです。その場合は、下記の場合同様、個別の検討が必要です。
一方、センターラインがない場合は、道路の状況と双方の車の走行の状況に応じて個別に過失割合を検討する必要があります。
センターラインオーバーの事故が起きやすいケースとしては、追い越しの場合、急カーブの場合、駐停車車両を追い越す場合、等が挙げられます。個々の状況に応じて過失割合が10:0とは異なる場合があるので、注意して検討しましょう。相手方(保険会社)の主張に納得がいかない場合は、まずは交通事故案件を多く扱っている弁護士にご相談頂ければ、と思います。

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