交通事故の被害にあった方は、整形外科や接骨院に通院することになりますが、この通院にかかった交通費も、加害者(加害者の加入する保険会社)に請求をすることができます。
この場合、基本的に、相手方に請求することができるのは、公共交通機関を利用した金額です(自動車の場合は、1キロメートルあたり15円のガソリン代)。
なかには、全身が痛み、とても公共交通機関では通院できないのでタクシーを利用したいという方もいらっしゃると思いますが、原則はあくまで公共交通機関を利用した金額なので、タクシーによる交通費が認められるのは例外的な場合です。
「電車に乗ることができないわけではないけど、ちょっと億劫だな」、という感覚でタクシーを利用してしまうと、あとから交通費を否定されてしまう場合もありますので、タクシーを利用する際は注意が必要です。
では、どのような場合であれば、タクシーが認められるのでしょうか。
交通事故の際に、弁護士や裁判官が参考にする書籍として『赤い本』(日弁連交通事故相談センター発行)というものがありますが、これによると、タクシー代が認められるのは、「症状などによりタクシー利用が相当とされる場合」とされています。
具体的にどんなケースで認定がされているかというと、公共交通機関を利用しようと思うと、1時間かけて自宅から駅まで歩かなければならないケース、視力を失っており、杖の携帯ないし盲導犬を連れていることが必要であったようなケース、等です。
以前に、私が担当した案件では、上記裁判例と同様、自宅から駅までの公共交通機関の利用が難しいという事案がありました。その事案では、足を骨折して松葉杖をつかなければならない状況でしたが、その状態では、揺れや突然停止があり得るバス、あるいは満員電車に乗ることが困難であったという事情等を説明し、タクシーによる通院交通費、大学までの交通費を認定してもらうことができました。
これらの例からすると、赤い本でいうところのタクシー利用の相当性が認められるためには、症状の部位・程度から、タクシーを利用する必要性があることや、期間の相当性に関する事情を証明することが必要であると考えられます。上記の私が担当した事案では、主治医の先生に、「~までは公共交通機関の利用が困難である」という趣旨の文言を診断書に記載してもらい、タクシー利用の必要性があることを主張・立証しました。また、診断書や本人の証言をもとに、本人の症状や、自宅から病院等までの詳細な経路を主張・立証しました。
以上のように、通院にタクシーを利用した場合、後々問題になる可能性が高いといえます。回数が少なく、金額もさほど大きくない場合には、問題にならないかもしれませんが、後からタクシー代は負担しないといわれてしまうと、賠償額が大きく変わる可能性もあります。
タクシー利用を考える場合、あるいは、既に保険会社からタクシー代の支払を拒否されている場合、弁護士が専門知識をもとにお話をさせていただきますので、争いになる前に、ぜひご相談ください。