自転車どうしの事故に遭った場合も、車の事故と同様に加害者に対して責任を問うことができます。すなわち、慰謝料や治療代などの損害賠償を求めることができます。自転車でも自動車でも、元は民法709条の不法行為責任(過失に伴う責任)を追及するものなので、法律上は基本的に同じ考え方になります。また、自動車事故の場合に確立された基準が準用される場合が多いと考えられます。すなわち、慰謝料については「赤い本」の基準を用いて、また、過失相殺については「赤い本」や「判例タイムズ」の基準を用いる(準用する)ことも多いのです。
他方で、以下の点で、自転車同士での交通事故の場合における特色があります。
請求先 |
自賠責保険への請求ができない。 |
物的損害 |
自動車よりも耐用年数が短く、中古車市場も発達していないことから、修理費用ではなく、時価額賠償になる可能性が高い。 |
後遺障害 |
自賠責保険(損害保険料率算出機構)の後遺障害等級認定制度が使えない |
過失割合 |
自動車と比べて、小回りが利くことや免許なく誰でも運転できることから、自動車同士の事故の場合の過失割合を基本としつつも、修正される傾向にある。 |
その他、自転車の場合は保険に入っていないケースもまだまだ多いですし(その場合には保険会社ではなく加害者本人と交渉する必要があります)、運行供用者責任という概念は適用されない(自賠法の概念なので、自動車ではない以上、適用されない)、などいくつか異なる部分があります。
特に、加害者側に保険会社が付いていないことも多い点と、後遺症が残った場合に損害保険料率算出機構の等級認定制度が使えない点は注意が必要です。(労災に該当する場合は、労災保険の認定制度を用いることが考えられます。ただ、労災は比較的緩やかに認定されるといわれており、それ故に、労災の等級認定を元に交渉しても必ずしもそれに基づく請求が認められるとは限りません) もちろん、後遺障害の補償を受けられないという意味ではなく、自ら立証していかないといけないため、交渉や訴訟活動における負担が重くなりがちということです。
加害者に保険会社が付いていないことも多いがゆえに加害者本人と交渉をしないといけないケースも多く、互いに専門知識がないがゆえに大雑把な交渉になってしまったり、「言った」「言わない」という争いも起きやすい傾向があると思います。また、被害者側も何が一般的なのかわからないために、本来請求できるものをしないままになってしまっているケースもあるようです(例えば、治療費だけ請求して慰謝料は請求していなかったり、休業損害の請求を忘れていたり)。このような問題を避けるためには、事故に遭ったら速やかに弁護士に相談することをお勧めします。
また、加害者側に保険会社が付いている場合は、基本的には自動車の事故の場合と同じように、保険会社の担当者と話すことになります(保険会社の弁護士が出てくる場合もあります)。その場合でも、充分な補償を得るためには、被害者側も専門的な知識を持って交渉に当たる必要があり、そのためには交通事故案件に慣れている弁護士への依頼がお勧めです。
当事務所では、自転車事故も積極的に扱っています。相談料は、無料です。ご相談ご希望の方はお電話かメールでご連絡の上、事務所にご来訪ください。