「赤い本」について

1、赤い本とは

 赤い本というのは、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故センター東京支部編)のことであり、交通事故被害についての慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)の基準、過失割合の計算方法、などについて判例に基づいた基準が記された本です。この慰謝料の基準がいわゆる「赤い本の基準」です。この基準は、過去の裁判例をもとに作られており、それゆえに、「裁判基準」という言い方もされます。

 この本は、毎年更新されています。もっとも、内容は基本的に前年までのものが踏襲されていて、判例が加えられるなどの変更はあっても、慰謝料の基準はめったに変わりません。なお、今年(令和2年)は4月に民法の改正により民事法定利率が変わったため、逸失利益の計算に必要なライプニッツ係数は新しいものが加えられていました。

2、実務での使われ方

 弁護士が、赤い本に基づいて慰謝料を計算して加害者側の保険会社と交渉すると、多くの場合、その額か、それに近い額で示談ができます。ただ、「赤い本の8割か9割」で、と言われることもあり、必ず満額で応じてもらえるとは限らないです。もちろん、弁護士は満額になるように交渉しますが、どうしても相手方が譲らない場合には、示談するか訴訟をするか検討する必要があります。また、計算方法を巡って争点がある場合もあるので、必ずその通りになるというわけではないです。ただ、赤い本の基準が交渉における重要な指標であることは間違いありません。

 また、赤い本には多くの判例が掲載されており、それを引用して相手方保険会社を説得するというような使われ方もよくされます。

3、何が掲載されているのか?

・入通院慰謝料についての基準(一般的な場合用の表Ⅰと比較的軽度のむち打ちの場合等用の表Ⅱがあります)

・後遺障害慰謝料についての基準(等級ごとの金額)

・逸失利益に関する等級ごとの労働能力喪失率とライプニッツ係数

・過失割合の計算方法(パターンごと基本的な過失割合と修正要素)

などが掲載されています。

 その他、様々な項目についての判例が数多く掲載されています。

 

4、類似の本

 「青い本」という類似の本があり、それも地方によっては良く用いられると聞きます。ただ、東京やその近辺では「赤い本」の方が圧倒的に用いられていると思います。また、過失相殺については判例タイムズ38号にもよく似たパターン図と基本的な過失割合、修正要素、が出ており、こちらを用いる弁護士や保険会社の担当者もいます。これは赤い本とほとんど変わりませんが、パターン図によっては若干異なることがあるようです。

   なお、レッド・ブック、という言葉を聞くことがあるかもしれませんが、あれは中古市場における自動車の価値を調べるための本であり、「赤い本」とは異なります。レッド・ブックは、交通事故に関しては、物損事故で全損とされた場合の正当な補償の額を調べるために用いることがあります。

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