交通事故に関する民事訴訟について

交渉と訴訟

交通事故の被害に遭った場合、通常は、被害者の方は、治療終了後に、加害者側の任意保険会社に対して慰謝料などの支払いを求めて交渉します(休業損害などは治療中に交渉する場合もありますが、基本的に最終的な金額の確定は治療終了後となります)。弁護士に依頼した場合も、弁護士はまず交渉をします。
 多くの場合、交渉で、慰謝料や、案件により休業損害、逸失利益、など、交通事故による損害の補償について示談をして、解決となります。しかし、中には被害者側の考えと相手方の回答の間に開きが大きく、交渉での解決が難しい場合もあります。そのような場合には、訴訟での解決が考えられます。

民事訴訟の性質と手続き

 交通事故についての民事訴訟の性質

 ここで取り上げるのは、民事訴訟ですので、加害者に刑罰を与えるためのものではなく、加害者ないしその保険会社から充分な補償をもらうための訴訟です。一方、加害者に刑事罰を与えるための訴訟は刑事訴訟ですが、これは検察官が起訴・不起訴を決めるものであり(検察審査会の決議による強制起訴という例外はありますが)、被害者が直接的にするかしないかを決められるものではありません。ここでは、被害者の判断で提訴することができる「民事訴訟」について解説していきます。

 民事訴訟は、相手方に対して何か請求する権利があると考える人が裁判所に訴状を出すことで開始されます。交通事故の被害者の場合は、加害者に対して損害賠償請求をすることができると主張して訴状を出すわけです。実際は弁護士に依頼して起こすことが多いと思いますが、弁護士は代理人であり、被害者本人が当事者の地位になります。このように訴訟を起こした当事者を原告といい、相手方が被告になります。

 また、交通事故の被害者が提訴する場合、訴訟の類型としては、基本的に、「損害賠償請求事件」となります。なぜなら、事故による損害の賠償を求めて起こす訴訟だからです。

訴訟の流れ

 裁判所に訴状を出せば、不備があれば補正を求められますが、不備がなければ、期日の指定がなされ、審理が始まることになります。期日の回数に決まりはありませんが、争点が少なければ、数回程度で結審に至ると思います。期日は通常の公開の期日のみならず、弁論準備手続きという非公開の期日が開かれることも多いです。また、途中で、当事者尋問や証人尋問を行うこともあります。

訴訟になるケース

では、訴訟になるのは、どのような場合が多いでしょうか?
様々なケースがありますが、代表的なものを挙げると、

過失割合について見解の相違があるとき(過失相殺の問題)
・交通事故による負傷と休業の因果関係について争いがあるとき(休業損害の問
題)
・交通事故による負傷と治療の因果関係について争いがあるとき(治療費や、通
院期間の問題)
・交通事故による負傷と後遺障害の因果関係について争いがあるとき(後遺障害
慰謝料、逸失利益の問題)
・後遺障害による労働能力低下による収入の低下の見込みについて争いがあると
き(逸失利益の問題)
・争点は特にないが任意交渉では充分な回答が得られなかったとき
などがあります。
 過失割合は多くの場合事実認定の問題が中心となります。一方、事故と後遺障害の因果関係のように医学的な問題が争点となることもあります。
例えば、後遺障害と事故との因果関係が完全に否定されれば、後遺障害に対する補償はゼロになってしまいますが、事故前からの疾患がある程度寄与しているとされた場合は、その割合に応じて減額がされることになります。いずれの場合も、被害者が受け取れる補償の額に大きく影響するので、被害者の方にとって重大な問題となります。

立証の方法

立証の方法は、過失割合に関する争いの場合、警察の実況見分調書、ドライブレコーダー、防犯カメラ、などの客観的な証拠の他、当事者尋問が採用されることがあります。医学的な問題については、カルテ、診断書、医師の意見書・鑑定、医学論文などが証拠として用いられます。時には医師に対する証人尋問が実施されることもありますが、自分に有利な内容を証言してくれる医師を探すのは当事者の責任となります。

その他、争われている問題に応じて、様々な証拠が提出され、裁判所はそれに基づいて判断を下すことになります。

争点がないように見えても

一方、任意交渉では慰謝料等を出し渋る保険会社もあり、特に争点はないけれども「赤い本」満額を得るためには訴訟が必要な場合もあります。
ただ、ここで気を付けないといけないのは任意交渉の段階では特に争点がないように見えても、提訴後に加害者側(多くの場合実質は保険会社)がこれまで問題にしなかった点を争ってくるケースが珍しくないということです。そうすると、提訴した結果、期待とは逆に得られる金額が下がってしまう場合もあります。

この点については、弁護士は、様々な角度から事案を検討し、ご依頼者様に示談が良いのか訴訟が良いのか、メリットとリスクをご説明し、最終的にはご依頼者様の希望に従って示談か訴訟か決めることになります。

裁判になった場合の解決方法

裁判にした場合でも、必ずしも判決まで進むとは限らず、途中で示談がなされる場合もあります。時には、裁判官が心証を開示しつつ、和解を進めてくることもあります。

 ただし、途中で和解に至らなければ、判決ということになります。第1審に対しては送達から2週間以内に控訴をすることができます。期間内に行われなければ、確定します。なお、控訴状の提出先は第1審裁判所なので、間違いないように気を付ける必要があります。

弁護士費用の請求など

なお、裁判の場合、判決では、弁護士費用として認容額の1割程度が認められることが一般的になっています。実際にかかった弁護士費用ではなく、損害賠償として認められた額の1割程度という計算が一般的です。

また、年5%(令和2年4月1日以後の事故だと年3%)の遅延損害金も認められることとなります。
ただ、これらは途中での和解の場合は、支払いを求めない(放棄する)のが一般的です。

弁護士にご相談を

交通事故の訴訟は複雑で、一般の方が代理人を付けずに行うことは難しいと思います。そこで、弁護委に相談、依頼することが望ましいと思います。当事務所では多くの交通事故案件を扱ってきました。その中で、訴訟も多く経験しています。
 交通事故の被害に悩んでおられる方は、まずはご相談ください。

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