判例タイムズというのは、判例タイムス社が発行する法律雑誌であり、文字通り、判例の紹介やそれに対する解説を主な内容としています。
交通事故の案件を扱う上で重要なのは、別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」です。ここには、様々なパターンについて、過失割合の判断基準が掲載されています。すなわち、事故の当事者の種類(四輪車、バイク、歩行者)、場所(信号のある交差点、信号のない交差点、路外からの出入り、など)、当事者の進行方向、などを基に、数百のパターンを挙げて、それぞれの基本的な過失割合が出ています。さらに、それらに対する各種の修正要素(30km以上の速度違反、15km以上の速度違反、よそ見運転、酒気帯び運転、夜間、高齢者・・・)も出ており、事故の当事者や場所等の情報からまずどの図に当てはまるかを判断し、それを個別の事情に基づく修正要素に当てはまれば修正する、という仕組みになっています。
実のところ、「赤い本」にも同様の図があり、多くは基準は変わらないのですが、個別の事件について検討していると、微妙に異なったり、中にはそのケースに当てはまるパターンの図が赤い本にはなくて判例タイムズにだけ出ていることもあります。どちらが正しいとかどちらがより詳しいというわけではないのですが、「赤い本」で判断に迷ったときに「判例タイムズ38号」が有用な場合もあるので、交通事故を扱う弁護士はほとんどの方が両方とも持っていて必要に応じて使い分けていると思います。
もちろん、保険会社も「赤い本」か「別冊判例タイムズ38号」の図を基に議論をしてくることが多いので、弁護士が交通事故案件を扱う場合は、この本を手元に置いておくことは必須だと思います。
ご相談に来られた方に説明する場合も、過失割合が問題になっている場合は、「赤い本」か「別冊判例タイムズ38号」を使うので、弁護士が「判例タイムズによると・・」という感じで説明を始めたら、この本のことを指している場合が多いと思います。
もちろん、専門家向けのものなので、案件を弁護士に依頼する場合には、ご自身で読んで理解する必要はないです。ただ、弁護士の説明を聞く上で「そういう本があるんだ」と知っていればわかりやすいと思うので、ご紹介させて頂きました。