逸失利益の計算とライプニッツ係数
ライプニッツ係数は、後遺障害による逸失利益の補償の際に用いられる係数であり、逸失利益の補償は、基礎年収×労働能力喪失率×ライプニッツ係数、で計算します。なぜこのような係数を用いるのでしょうか? それは、こういうことです。すなわち、逸失利益は、後遺障害による収入の低下ですから、理論的には日々発生するはずです。しかし、実際には、示談が成立すれば一括で支払われます。本来は日々発生する逸失利益を一括で受け取るので、それによる利息分を調整するための係数です。
例えば、5年間の後遺障害の補償を求める際に、そのまま5をかけると、5年分を先に一括でもらうためにそれを運用して増える分得をすることになります。被害者とはいえ本来の損失以上に補償を受けられるのは趣旨に反するので、そこで、そういう問題を避けるために、年数をそのままかけるのではなく、それよりはやや小さい数値であるライプニッツ係数をかけることになっています。ライプニッツ係数は、逸失利益の年数により決まっています。それゆえ、原則は症状固定時から67歳までの年数に当たる数値を用いますが、むち打ちの場合は基本的に5年分しか補償されないので、基本的には5年の場合の数値を用います(ただ、もう少し長期の補償が認められる場合もあり、その場合は、その年数に相当するライプニッツ係数を用います)。
民法改正に伴うライプニッツ係数の変更
もっとも、この係数は、これまで民事法定利率5%を前提に計算されてきましたが、令和2年(2020年)4月施行の民法の改正により法定利率が3%に下がることで変更されます。具体的にはこれまでよりやや数値が大きくなり(利率が下がるので、これまでより得る利益が少なめになるから)、他の条件が同じ場合は逸失利益の額は増えることになります。例えば、5年の場合のライプニッツ係数はこれまで4.329だったのが、法改正以後は4.580になるため、基礎年収や労働能力喪失率が同じ場合に受け取ることができる逸失利益の補償の額はやや増えることになります。
なお、法定利率はこれまで年5分(5%)と定められていましたが、今後は変動制となったため、それに応じて係数が今後も変わることが予想されます。