高次脳機能障害とは、交通事故の衝撃により、脳みそが強くゆすられ、脳内にズレが生じ、大脳表面と脳幹部・大脳辺縁系を結ぶ神経が切断・損傷して、広範な神経連絡機能の断絶を生じる病態をいいます。
言語・思考・記憶・行為・学習・注意などに障害が起きた場合は、高次脳機能障害である可能性があるといえます。ただ、はっきりさせるためには、しっかりとした検査が必要です。
障害の類型によってはCTやMRIなどの画像に異常が見られない場合もあり、外見にも一見すると全く変化の無い場合も多いため、これまで重大な後遺障害との認識がなかったのが現状です。
本人も自覚症状が無いため、家族も事故の影響だと気がつかずに終わってしまう場合が多くあると言われています。
また、そのために、勤労能力が低下して生活が困難になってしまう場合が多々あります。近時ようやく、この、高次脳機能障害について、医学や補償の面で認識されるに至りました。
ただ、後遺障害として認定してもらうためには、適切な検査を受けることが必要です。事故直後から定期的にCTやMRIなどの画像を取ってもらうことと、意識障害のレベルや長さについてしっかり記録をとってもらうこと、が立証のためには重要だと考えられ、そういう意味では、頭部にダメージを受けた事故の場合は、早い段階からのしっかりとした検査や記録が重要になってきます。(つまり、事故から時間が経ってからの検査や記録しかないと、事故との因果関係を立証できていないとされて認められない恐れが非常に高いのです)。
症状に応じて、後遺障害1級・2級・3級・5級・7級・9級などと格付けされています。
認定基準 |
補足的考え方 |
等級 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
身体機能は残存しているが高度の痴ほうがあるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの |
別表第1 1級1号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの |
別表第1 2級1号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、解除なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの |
別表第2 3級3号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの |
別表第2 5級2号 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの |
別表第2 7級4号 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業異時力などに問題があるもの |
別表第2 9級10号 |
(高次脳機能障害認定システム確立検討委員会「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムについて」(報告書)(平成12年12月18日))