交通事故が発生した後、被害者が別原因で死亡したのではないか、と相手保険会社へ疑われ、賠償額を減少されるケースがあります。
具体的には、
- 事故後に別病気に罹患し死亡した場合や、
- 事故後、自殺をしてしまう場合
が考えられます。
交通事故によって、損害が発生する場合、加害者に請求できる損害は、大きく通常損害(その交通事故によって通常発生する損害)と特別損害(通常発生する損害とは言えないが、加害者は、その交通事故で発生することが認識予見可能といえる損害)の2種類になります。
①のように、別病気に罹患したケースでは、その別病気の発症が事故を原因とするものであることが証明できる場合(例:事故により長期入院を強いられ、その結果衰弱し、肺炎等に罹患してしまう)には、被害者が高齢者などであれば、事故にあった場合には長期入院となり、衰弱する結果別病気に罹患する可能性が予見できますので、死亡したことによる損害を通常損害であるとして賠償請求を主張可能です。
他方で、②のような場合には、本人の意思が介在していることから、通常損害ということは困難です。また、交通事故によって被害者が自殺することまで予想できる加害者が存在するとは考えにくいため、特別損害ということも難しく、結果としては、交通事故と自殺との因果関係を主張することは困難です。
ただ、裁判例においては、交通事故の態様、その後の治療経過、自殺に至るまでの生活状況などの具体的事実を前提に、被害者が自殺に至ることを加害者が予見可能だったと判断しているケースも存在します(最高裁平成5年9月9日)