主婦の逸失利益
主婦の方が交通事故に遭って後遺障害が残った場合、逸失利益は認められるでしょうか? 収入がないと、基礎収入を観念できないので認められないのでは、と思うかもしれません。しかし、主婦の方が交通事故に遭い後遺障害が残った場合も、労働能力が低下したことに変わりはないので、逸失利益の補償がされます。(等級認定によって労働能力喪失率を計算する点は、サラリーマンなど実際に収入を得ている方の場合と同様です)
ここで、専業主婦については、他から収入を得ていないので、どのようにして基礎収入を考えるかという問題があります。家事労働についても、以下のような方法で収入の評価をすることは可能です。
具体的には賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計の女子労働者、全年齢平均の賃金を基礎年収とするのが一般的です。
なお、兼業主婦の場合には、実収入が上記の賃金センサスにおける平均賃金以上のときは実収入に従って計算し、それ未満のときは賃金センサスの平均賃金を用いることとなります。すなわち、パートタイマーで働いている、内職をしている、等の兼業主婦については、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出します。この点は、休業損害の場合と同様に考えてよいでしょう。
また、高齢の主婦の場合に認められるかどうか、ですが、平均余命,本人の健康状態、家族関係等を検討して、家事労働を行うことができる(行ってきた)場合には、逸失利益が認められると考えられます。通常は逸失利益は67歳までですが(むち打ちによる14級の場合などより短い場合もあります)、高齢の方の場合は、67歳を過ぎている場合は平均余命の半分の年数で計算するのが一般的です(67歳未満でも、その方が有利な場合は、その方法を用います)。
ただ、高齢の専業主婦の方の場合は、判例によっては逸失利益を否定したものもありますが、争われた場合は、生活実態等に従って、事故による後遺障害で家事に支障が生じていることを立証していくことが重要だと思います。
賃金センサスとは?
わが国の賃金に関する統計として、最も規模の大きい「賃金構造基本統計調査」のことです。厚生労働省が行なっています。
なお、センサス(census)とは、特定の社会事象について、特定時点で一斉に行われる全数調査(官庁の行う大規模調査)のことをさします。