【コラム】労災保険を使った場合における事故の加害者側への請求

1, 交通事故における労災保険の使用

 労災保険は、業務上の事由や通勤中に負傷した場合に補償がされる公的な保険です。労災は上記のように業務上の事由や通勤中の負傷について補償する保険なので、交通事故の場合も要件を満たせば使えます。
 労災保険は、治療費や休業損害などを支払ってくれます。ただし、休業損害は計算上の額の6割及び特別支給金2割の支給であり、満額ではない点に注意が必要です。また、後遺障害の認定がされると、逸失利益についても一定の範囲内で補償がされます。
 労災保険の場合過失相殺がされないので、特被害者側にも過失がある場合には労災を用いるメリットは一般に大きいといえるでしょう。

2, 労災保険で補償されないもの

 労災保険では精神的損害については補償されません。つまり、労災保険からは慰謝料は支払われないのです。また、休業損害や逸失利益も全額が補償されるわけではありません。そこで、充分な補償を受けるためには不足分を加害者側に請求する必要があります。
 なお、ここで、休業損害は損害の6割の分は相手方への請求から差し引く必要がありますが、特別支給金である2割の部分は差し引く必要はありません。

3, 労災保険による後遺障害等級認定

 労災保険により後遺障害等級認定をしてもらうこともできます。それにより、逸失利益の補償が労災の基準に基づいて行われます。ただし、労災の認定した等級を基に相手方保険会社に請求してもそのまま認めてもらえるとは限りません。自賠責の認定より緩やかに認定される傾向がある代わりに保険会社との交渉では根拠としては必ずしも十分ではなく、訴訟においても自賠責の認定ほど重視されない傾向があるように思います。 
 とはいえ、認定を受けられれば労災保険から逸失利益を支給してもらえるというメリットがあるので、認定を受けられそうな場合はぜひ申請するとよいでしょう。

4, 労災を使用した場合でも弁護士にご相談を

 労災を使用した場合でも、慰謝料など、労災保険から支給されない分や休業損害、逸失利益のうち労災からの支給では不足している分の請求については、ぜひ、弁護士にご相談ください。労災保険からの支給分を差し引く以外は、基本的に他の場合と同様、加害者側に対して請求をしていくことになります。それゆえ、相手方保険会社等との交渉や訴訟については、ぜひ、弁護士にご相談いただければ、と思います。

 また、労災で後遺障害等級認定を得た場合でも自賠責に対して重ねて後遺障害の等級認定を求めることもできるので、自賠責保険に対する被害者請求についても弁護士にご相談ください。ご依頼の場合は、自賠責への請求の後の相手方保険会社との交渉も引き続き弁護士が担当させていただきます。
 当事務所では労災を利用した事案についても多くご相談、ご依頼を受けてきました。労災は使用したけれどもそれ以外の補償をどのようにして請求すればよいかわからないという方は、ぜひ、当事務所にご相談いただければ、と思います。

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