【コラム】直進車と路外出入り車の事故の過失割合

1, 直進車と路外出入り車の事故の過失割合

道路を走っている車とその道路に出入りする車の事故の場合、どちらの過失が大きくなるでしょうか? これについては、判例タイムズ38号【147】図は、基本的な過失割合を路外出入り車8:直進車2(8:2)としています。すなわち、路外と出入りする車のほうが基本的に過失が大きいとするのが、判例タイムズ147図の立場です。

2, 【147】図適用の前提

上記【147】図適用の前提として、路外出入り車が減速、徐行等を履行していることを前提として、直進車に軽度の前方中止義務違反がある場合を想定している、とされています(278頁)。すなわち、路外に出る車は減速するし、路外から入ってくる車は徐行して入ってくるので、直進している車も前方をよく見ていれば衝突を避けられたはずだという考え方で、直進車にも過失を認めているわけです。

ただ、道路交通法の基本的な考え方として、直進車の走行を妨げてはいけないという考え方があり、基本は、路外出入り車のほうが過失が大きくなっています。

3, 直進車に不利な修正要素

直進車のほうに不利な修正として以下のものがあります。それぞれ、記載の数値の分、直進車の過失割合を重くするという意味です。

  1.  路外から進入する車が頭を出して待機していた場合は10ポイント

    ・・この場合、直進車から気が付くことがより容易であるはずだから、ということだと思われます。

  2. 路外から進入する車が既右折(右折を完了しているか、それに近い場合)の場合、10ポイント(ただし、反対側車線の直進車と衝突した場合のみ適用)

    ・・すでに右折を完了しているか、それに近い状況であれば、直進車は発見することがより容易だったと思われるから過失割合をより大きくする、ということでしょう。なお、タイムズの解説によると、右折完了後すぐの追突の場合はこの数値を用いて、車線に入って追突までの間隔が大きければ通常の追突事故とされ(その場合は原則として追突した車の過失が100%となる)、中間的な場合は中間値を取って解決する、とされています。

  3. ゼブラゾーンを走行していた場合 10ポイント~20ポイント

    ・・タイムズの解説(278頁)は車両の運転者等の意識としてゼブラゾーンはみだりに進入すべきではないと考えているのが一般的であること、抜け駆けのように敢えてゼブラゾーンを走行した運転者には交通秩序を乱すものとしてある程度非難すべきものがあること、を理由として挙げています。(ゼブラゾーンというのは、道路に白いペンキで縞模様が書かれているエリアのことで、通常、自動車の走行は想定されていません)

  4. 直進車に15km以上の速度違反があった場合 10ポイント

    ・・直進車に速度違反があればそれだけ事故回避が難しくなるので、過失が大きくなるのは自然なことだと思われます。

  5. 直進車に30km以上の速度違反があった場合 20ポイント

    ・・直進車に速度違反があればそれだけ事故回避が難しくなるので、その程度に応じて過失が大きくなるのは自然なことだと思われます。15km以上30km未満の場合と比べて速度違反の程度が甚だしいので、20ポイントの修正となっています。

  6. その他の著しい過失 10ポイント

    ・・脇見運転、酒気帯び運転、携帯電話で通話したり画面を注視していたりした場合、等が当てはまります。

  7. その他の重過失 20ポイント

    ・・酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、などが当てはまります。

4,直進車に有利な修正要素

逆に、直進車の過失を減らす方向の修正要素もあります。

  1. 幹線道路 5ポイント

    ・・「歩車道の区別があって、車道幅員がおおむね14m以上(片側2車線以上)で、車両が高速で走行し、通行料の多い国道や一部の都道府県道を想定している」とされています(203頁)。この場合の修正の理由はタイムズの解説には出ていませんが、おそらくは、このような道路は比較的速いスピードで大量の自動車が走行することを前提としており、直進車が優先されるべき程度が高いということだと思われます。

  2. 徐行なし  10ポイント

    ・・路外から入るときは徐行をせずに著しく加速して進入するような場合は、直進車が避けることは難しくなるので、直進者側の過失を減じる方向の修正要素とされています。

  3. 路外出入り車の著しい過失 10ポイント

    ・・脇見運転、酒気帯び運転、携帯電話で通話したり画面を注視していたりした場合、等が当てはまります。

  4. 路外出入り車の重過失 20ポイント

    ・・酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、などが当てはまります。

5,まとめ

 以上をまとめると、路外出入り車:直進車の過失割合は原則として8:2ですが、上記のように修正されることはあります。ただ、直進車の過失がゼロになるのは路外出入り車に重過失があるような例外的な場合に限られるので、直進車にも路外出入り車に注意をして運転する義務が課されていると言えるでしょう。

6,立証について

この【147】図の修正要素はどのようにして立証すればよいのでしょうか? まず、ドライブレコーダーがあれば、比較的明確になると思います。また、それ以外だと、コンビニなどの防犯カメラの画像を利用する方法もあり、コンビニなど店舗の駐車場との出入りの際の事故の場合等は、当該コンビニのカメラに写っていることも期待できます。ただ、防犯カメラの画像は比較手短期間で消えてしまうので、早めに管理者にお願いしてコピーをもらっておくなど、証拠の保全も重要です。 
 その他、実況見分調書物件事故報告書等が証拠になりうるのは他の類型の事故の場合と同じです。また、店舗の駐車場のように人が多い所であれば、目撃者も多いことも期待されるので、もし証言してくれる人がいれば、事実解明の手掛かりになりうるでしょう。また、訴訟になった場合には、過失割合について争いがある場合、当事者尋問が行われることが多いです(途中で示談が成立した場合を除く)。

 当事務所では、過失割合に争いがある案件を含め、多くの交通事故事件を解決してきました。過失割合で納得がいかないという方は、まずはご相談ください。交通事故に関しては、相談だけなら何度でも無料です。

交通事故のご相談は、経験豊富な弁護士へ!

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

HOME Mail Tel